すばる望遠鏡と「ニュー・ホライズンズ」の共同観測で探る太陽系外縁部

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2020-07-15 国立天文台

すばる望遠鏡と「ニュー・ホライズンズ」の共同観測で探る太陽系外縁部 図2

ヒロ山麓施設のリモート観測室の様子ヒロ山麓施設のリモート観測室の様子。マウナケア山頂のすばる望遠鏡、リモート観測室、そして世界各地の多数の研究者をテレビ会議システムでつないで、観測が進められている。リモート観測室では、観測チームの中心メンバーの一人でHSC担当の寺居剛サポート・アストロノマー(ハワイ観測所)が、天候の状態やデータの品質を確認している。(クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(327KB)

すばる望遠鏡は、米国航空宇宙局(NASA)の太陽系外縁天体探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」との共同観測を、2020年5月から進めています。すばる望遠鏡に搭載した超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam、以下HSC)」を活用して、探査機が今後調査する対象天体の候補を探す、たいへん重要な役割を担います。

ニュー・ホライズンズは2006年に地球を出発し、2015年7月には冥王星に、2019年には別の太陽系外縁天体「アロコス((486958)Arrokoth)」に近接通過して、詳細な観測を行いました。ニュー・ホライズンズは引き続き太陽系外縁部の探査を続けていますが、今後探査する候補天体を探す上で、すばる望遠鏡の超広視野の観測はたいへん強力な手段となります。

ニュー・ホライズンズが現在航行しているいて座の方向で、すばる望遠鏡はHSCの視野2つ分、満月のおよそ18個分に相当する領域を観測しています。この観測では新たな太陽系外縁天体が100個以上見つかると予想されていて、そのうちのおよそ50天体はニュー・ホライズンズでの観測が可能であると期待されています。太陽系外縁天体を地球上の望遠鏡から観測すると、天体に太陽光がほぼ正面から当たる「満月」のような状態になります。一方、ニュー・ホライズンズでは、太陽光が横から当たる「半月」のような状態になる別の方向から観測できる場合があります。同じ天体を太陽光の当たり方が異なる状態で観測することで、その天体の表面の特徴を詳しく調べることができるのです。

さらに、すばる望遠鏡で新たに見つかった天体の中に、ニュー・ホライズンズの近接通過に適した天体があるかも検討します。時間を空けて行った数回の観測から新たな天体を探し出し、その軌道を精密に決定することを目指します。観測領域がちょうど天の川の方向にあたるため、背景にたくさんの星があったり、近くにとても明るい星があったりと、新たな天体を探し出すには困難が伴います。しかし、すばる望遠鏡とHSCのユニークな性能を最大限に生かしながら良質な観測データを得て、ニュー・ホライズンズと共に太陽系の起源に迫るために、観測チームは今後も工夫を凝らしていきます。

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