2020-05-13 京都大学
金光義彦 化学研究所教授、田原弘量 同助教、媚山悦企 理学研究科修士課程学生らの研究グループは、半導体ナノ粒子の励起状態をフェムト秒光パルス対で制御することで、光学利得閾値を低減する新しい方法を開発しました。
光学利得閾値はレーザーの性能を表す指標の1つであり、この値が小さいほど少ないエネルギーで光を増幅でき、高い効率のレーザーが実現できることを意味します。半導体ナノ粒子による光増幅においては、高エネルギーの電子と正孔からなるホットエキシトンや対称的なホットバイエキシトンと呼ばれる励起状態にあるナノ粒子が、発生した光を再吸収しナノ粒子集合体での光増幅の効果を弱める、すなわち光学利得閾値を上昇させてしまうことが問題となっていました。
本研究グループはパルス対でナノ粒子集団を励起することで、増幅された光の再吸収が少ない非対称なホットバイエキシトン状態を選択的に生成し、励起直後のナノ粒子集団での光学利得閾値の低下を実現しました。この成果は、短パルスレーザーをはじめとする、半導体ナノ粒子を用いた新たな光源開発へつながると期待されます。
本研究成果は、2020年4月28日に、国際学術誌「Nano Letters」のオンライン版に掲載されました。
図:半導体ナノ粒子集団において、非対称なエネルギー状態からなるホットバイエキシトンを生成することで、ナノ粒子集合体から効率高く光が増幅されることを実現
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.0c01079
Etsuki Kobiyama, Hirokazu Tahara, Ryota Sato, Masaki Saruyama, Toshiharu Teranishi, Yoshihiko Kanemitsu (2020). Reduction of Optical Gain Threshold in CsPbI3 Nanocrystals Achieved by Generation of Asymmetric Hot-Biexcitons. Nano Letters.