スーパーコンピュータ「富岳」のプロトタイプがGreen500で世界1位を獲得

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世界トップの消費電力性能を実証

2019-11-18 富士通株式会社,理化学研究所

富士通株式会社(以下、富士通)と理化学研究所(以下、理研)が共同で開発を進めているスーパーコンピュータ「富岳(ふがく、注1)」のプロトタイプが、スーパーコンピュータの消費電力性能を示すランキングであるGreen500において、世界1位を獲得しました。

本ランキングは、米国で開催中のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に関する国際会議である「SC19」において、11月18日に発表されました。Green500は、世界中のコンピュータシステムを計算処理速度の速い順に上位500位までランク付けしたリストであるTOP500(注2)にランクインしたスーパーコンピュータの中で、少ない消費電力で効率的に計算できた順にランク付けしたものです。

CPU「A64FX」のイメージ画像

CPU「A64FX」のイメージ

今回、Green500で世界1位を獲得したシステムは、「富岳」のプロトタイプとして富士通が製造し、沼津工場(所在地:静岡県沼津市)に設置したものです。本システムには、富士通が世界で初めて開発したArm SVE(Scalable Vector Extension)命令をサポートしたCPU「A64FX」を768 個搭載しています。

今回の性能測定では、ピーク性能の2.3593PFLOPS(ペタフロップス)に対し、連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK、注3)で1.9995PFLOPS、消費電力1ワットあたりの性能で16.876GFLOPS/W(ギガフロップスパーワット)を達成し、「富岳」の開発技術が世界トップの消費電力性能を有することを実証しました。

富士通は今後も、「富岳」の完成に向けて、着実にシステム製造と設置を推進していきます。また、「富岳」の開発で培った技術を生かして開発した商用スーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」および「PRIMEHPC FX700」の提供を通じて、より幅広いお客様にこの消費電力性能を利用いただけるよう取り組んでいきます。

理研は、世界最高水準の汎用的なシステムを目指す「富岳」の開発主体として、2021年頃の共用開始を目指して開発・整備を確実に進めています。「富岳」はSociety5.0(注4)を支える重要な研究基盤として、創薬や防災、産業競争力の強化などを実現するシミュレーションに加え、新しい利用分野であるAI(人工知能)やビッグデータの基盤としての利活用が期待されています。

富士通株式会社プレスリリースのページ

コメント

富士通株式会社 理事 新庄 直樹のコメント

今回の受賞は、理研と開発を進めてきたスーパーコンピュータ「富岳」の3つの大きな開発目標である、高いアプリケーション性能、省電力、使い勝手の良さのうち、省電力について世界一のレベルを達成することができたことを意味します。また、「富岳」はGPUなどのアクセラレータを用いない、様々なアプリケーションを処理することが可能である汎用CPUのみを搭載したシステムです。つまり、今回のランキングにおいて「富岳」の開発技術は、アクセラレータを用いた他システムを上回る消費電力性能を持ち、かつ、汎用CPUのみの他システムと比較して約1/3の電力で処理を行える省電力なシステムであることが実証されました。これは、当社が長年CPUを開発してきた技術・ノウハウの蓄積と、設計の初期段階から性能と消費電力を意識した徹底的な最適化の取り組みが可能にしたものです。

汎用性と省電力性を兼ね備えた「富岳」が、Society5.0の実現を担うスパコンとして広く活用されることを期待しています。

理化学研究所 計算科学研究センター センター長 松岡 聡のコメント

「富岳」ではCo-design(コデザイン)による開発で目標を大幅に超える世界最高の電力性能を誇る汎用Arm CPUの開発に成功しました。GPUマシンがランキングの上位を占める中で、汎用CPUマシンがこれらを上回るのは非常に画期的なことです。

この異次元の電力性能の汎用CPUは、新しいスタンダードになる事で革命的なHPCの成果創出にとどまらず、Society5.0を実現するAI(人工知能)やビッグデータなどの新しい技術への適用が見込まれます。

今回発表されたランキング

Green500 List(英語)

注釈

注1.スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」

スーパーコンピュータ「京」の後継機。2020年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とするスーパーコンピュータ。2014年度から開始された文部科学省のフラッグシップ2020プロジェクト(ポスト「京」の開発)事業の下、理研計算科学研究センターが「富岳」を開発整備し2021年頃の共用開始を目指している。

注2.TOP500

TOP500は、世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。1993年に発足し、スーパーコンピュータのリストを年2回発表している。

注3.LINPACK

米国のテネシー大学のJ. Dongarra博士によって開発された規則的な行列計算による連立一次方程式の解法プログラムで、TOP500リストを作成するために用いるベンチマーク・プログラム。ハードウェアのピーク性能に近い性能を出しやすく、その計算はシンプルだが、応用範囲が広い。

注4.Society5.0

「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」として、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。

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