一般住宅向け浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発

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導入コスト40%減と運用コスト10%減の大幅なコスト削減にめど

2018/06/25 新エネルギー・産業技術総合開発機構 日本大学工学部

NEDO事業において、日本大学工学部は、日商テクノ(株)および(有)住環境設計室とともに、一般住宅向けの浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発しました。

低コスト化を図るため、システムの地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく新たな施工法と、地中熱交換器群と冷暖房用室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術を開発し、最終目標である導入コスト40%減と運用コスト10%減の大幅なコスト削減を達成できる見込みを確認しました。

今後、実証試験を引き続き実施し、システム構成機器と制御系の最適化によりさらなるシステムの効率化を図るとともに、商用化を見据えた信頼性検証を行う予定です。

浅層地中熱利用システムにおける開発技術説明図
図1 浅層地中熱利用システムにおける開発技術

1.概要

日本における再生可能エネルギー利用の一層の拡大に向け、住宅基礎杭などを活用できる浅層地中熱利用※1は有力な熱エネルギー候補とされてきました。地中熱利用システムは、地中熱交換器、ヒートポンプ、室内機などで構成されます。地中に埋設させた熱交換器を通じて地中の熱を取り出し、ヒートポンプで冷熱・温熱を作り出して、室内機で冷房・暖房をするシステムです。冬は外気より高い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く暖房運転が行えます。また、夏は外気より低い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く冷房運転が行えます。しかし、従来のシステムでは熱交換器の埋設孔を深く掘る必要があるため掘削コストが大きくなる、また地中熱交換器とヒートポンプ、ヒートポンプと室内機の制御が最適化されていないため、運用コストが高いなど、多大なコストがかかることが課題でした。このため、既築住宅を含む一般の住宅への普及には従来と比較し大幅なコストダウンが不可欠であり、新たな要素技術およびシステム技術の開発が急務となっていました。

今般、NEDO事業※2において、日本大学工学部は、日商テクノ株式会社および有限会社住環境設計室とともに、一般住宅向けの浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発しました。

今後、本システムの配管系の施工法改良などで引き続きシステムコスト低減を図ります。また、本システムの検証試験を引き続き実施し、システム構成機器および制御方法の最適化によってさらなるシステム効率向上を図るとともに、商用化を見据えた信頼性検証を行っていく予定です。

2.成果の詳細

本事業では、浅層熱利用システムの導入コスト低減に寄与する技術として、地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく回転埋設工法※3を開発しました。本施工法は、埋設機能および熱交換機能を保有する2重管方式熱交換器※4を利用するため、排出残土もなく、埋設作業と熱交換器設置作業を同時に実施する低コスト型の手法です。これを実現するため、深さ20m以浅の地中熱利用であることを活かし、幅、奥行き1m程度の小型軽量埋設機構を開発するとともに、短い鋼管を順次接続しながら地中に回転埋設していくためのねじ式接続法と周囲土壌を圧密しながら貫入していく2重管方式地中熱交換器と、鋼管の先端錐(ビット)※5の設計法により本施工法を開発しました。

また、運用コスト低減に寄与する技術として、複数の地中熱交換器群と冷暖房室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術を開発しました。本制御技術により、複数の室内機群の運用に影響される熱負荷に応じた循環ポンプの流量の適正化、および地中熱交換器の稼働率の適正化に成功しました。

開発技術の検証にあたっては、福島県郡山市の日本大学工学部再生可能エネルギー共同研究施設および福島県葛尾村の実験場において実証設備を構築し(図2)、開発技術と従来技術とを同一の環境条件で比較評価するとともに、既築の戸建住宅へ新たにシステムを導入する場合の初期コストについて、各種設備の実際の調達を念頭に実証的な評価を進めてきました。その結果、初期導入コスト評価では、浅層熱利用の実証システム(地中熱交換器8m×13本、5kWヒートポンプ、冷暖房用室内機2台および配管など)導入の既築住宅を対象とした場合、新施工法により導入コストを40%削減した150万円/5kWの浅層地中熱利用システムを実現できるとの見通しが得られました。さらに、従来の浅層地中熱利用システムと比較した結果、システムの運用コストを10%低減できることも確認しました。

郡山市・日本大学工学部再生可能エネルギー共同研究施設写真
図2 郡山市・日本大学工学部再生可能エネルギー共同研究施設

【注釈】
※1 浅層地中熱利用
地表から20mより浅い土壌中に設置した熱交換器からの熱エネルギーを冷暖房へ利用する方式を指す場合が多い。
※2 NEDO事業
事業名:再生可能エネルギー熱利用技術開発/一般住宅向け浅部地中熱利用システムの低価格化・高効率化の研究

事業期間:2014年度~2018年度
事業の狙い:

  • 小型回転埋設機の開発による戸建て住宅への施工対応
  • 小口径鋼管を利用したコンパクトな地中熱交換器の導入による新築および既築住宅導入への対応
  • 冷暖房需要に応じたシステム運転制御による運用コスト低減
  • 採熱期待値をわかりやすく提供することによる地中熱利用の推進
※3 回転埋設工法
地中熱交換器として使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく工法。一般の掘削工法とは異なり、静穏で廃土が出ないなどの特長がある。
※4 2重管方式熱交換器
熱交換器が内管と外管で構成されており、外管壁を通じて、外管壁と内管壁との間に流れる流体と土壌とが熱交換する方式。
※5 先端錐(ビット)
回転埋設のために鋼管先端に設けられた特殊な3次元形状を持つ尖鋭部。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:井出本、藤田

日本大学 工学部 研究事務課 担当:関

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本

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