バイオプリンティング技術によりDNA分子数を1個単位で制御

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DNA分子が所定の数だけ入った標準物質により、遺伝子検査の精度向上に貢献

2018-06-04 株式会社リコー,農研機構,株式会社ファスマック

株式会社リコー(社長執行役員:山下 良則、以下リコー)、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(理事長:久間 和生、以下農研機構)、日本製粉グループの株式会社ファスマック(代表取締役社長:布藤 聡、以下ファスマック)は共同で、遺伝子検査装置および試薬の精度管理で使うことができる、DNA分子の絶対数が1個単位で制御された新しいDNA標準物質を、バイオプリンティング技術を活用して実現しました。標準物質とは、成分の含有量が明確にされた測定の基準となる物質のことで、DNA分子の数が個数単位で制御された標準物質はこれまで製造できませんでした。このたび開発したDNA標準物質の製造法により、遺伝子組換え食品やがん・感染症の検査など、特定のDNAを検出する遺伝子検査用の標準物質の製造が可能になり、検査をより確実なものにすることができます。

この成果は、現地時間6月4日から7日に開催されるBio International Convention(米国・ボストン)および、6月27日から29日に開催されるBiotech(日本・東京)にて発表します。

図

遺伝子検査において広く用いられる手法の一つであるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応、Polymerase Chain Reaction)は、DNA分子1個レベルから増幅を行うことで検出することができると言われており、その高感度な検出性能を活かして、遺伝子組換え食品、がん・感染症の検査などに幅広く用いられています。このような検査の一部では検査対象となる特定のDNA配列(ターゲット遺伝子)の見逃しが許されず、検査機関において検査機器、試薬および検出手法全体が正しく精度管理されていることが重要となっています。これまでもDNAの種類と濃度が規定された標準物質がいくつかの企業、研究機関から提供されていますが、DNA分子数がモル(1モルはDNA分子6.02×1023個に相当)で規定された高濃度のもので、100個以下の低濃度での検査精度を確認するためには、希釈した標準物質を使う方法が一般的でした。この方法では希釈の過程でDNA分子濃度に誤差が生じるため、DNA分子数個レベルになるとサンプルにDNA分子が想定個数以上入ってしまったり、あるいは逆に全く入らなかったりする問題がありました。

この度、農研機構にて開発したターゲット遺伝子配列を組み込んだ遺伝子組換え酵母を、リコーのバイオプリンティング技術を用いて1個単位で決まった数だけプレート上のウェル(くぼみ)中に分注し、特定の遺伝子配列のDNA分子が所定の数だけ入ったDNA標準物質(DNA標準プレート)を製造することに成功しました。DNA分子の数を直接数えることは今まで不可能でしたが、ターゲット遺伝子配列を組み込んだ細胞(この場合は酵母)を扱うことによって間接的にDNA分子数をカウントすることを可能としており、バイオプリンティング技術で細胞を扱うことにより、高い生産性でDNA標準物質の製造が可能となります。

農研機構、ファスマック、リコーが共同でリアルタイムPCRを用いた評価を行ったところ、1分子から1000分子というこれまでに無い低濃度領域における検量線(検査対象物質の濃度を測る基準となる、標準物質を用いた測定結果のグラフ)の作成が可能であることを示すことができました。

リコーは、インクジェット技術を応用したバイオプリンティングの要素技術として、細胞を安定的に吐出することのできるヘッドおよび、吐出した液滴中の細胞数をカウントする技術の開発を行ってきました。

農研機構およびファスマックは、遺伝子組換え食品の検査を中心に、遺伝子検査に関する技術開発、および1分子DNA標準物質の開発、検査手法の国際標準化に長年携わってきました。

この協業によって開発された本製造法によるDNA標準物質を用いることで、遺伝子検査装置、試薬、遺伝子検査手法の精度管理をこれまで以上に厳密に行うことが可能となり、遺伝子組換え食品検査精度の向上やがん・感染症の見逃しなどを防ぐことにも繋がり、社会課題の解決に貢献する技術になるものと期待されます。

※ 記載の会社名および製品名は、それぞれ各社の商号、商標または登録商標です。

 

0505化学装置及び設備
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