2014-2017期野辺山観測所レガシープロジェクトのデータがリリースされました。

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2018-06-01 国立天文台

2014-2017期野辺山観測所レガシープロジェクトに採択されたStar Formationレガシープロジェクト、COMINGレガシープロジェクト、FUGINレガシープロジェクトで得られたデータがリリースされました。 野辺山観測所レガシープロジェクトは次世代の研究の土台となるデータを残すことを目的とてしています。 ALMAをはじめとする電波望遠鏡を用いた観測のみならず、赤外線やその他の波長の観測にも有効に活用されることが期待されます。

[野辺山観測所 Star Formation レガシープロジェクト]
銀河の中における星のでき方は、観測で明らかになっている銀河の特徴を決めるために重要な働きをしているだけで無く、 銀河の進化にも重要な影響を与えています。 銀河の中で星ができる仕組みはどの様なものなのでしょうか? この一見単純な問いに対する十分な共通認識はありません。 理論的な研究では、宇宙空間に浮かぶ分子雲の中に一旦濃い部分(分子雲コア)ができると、分子雲コアを形作っているガスが お互いに重力を及ぼし合って中心部に集まり、より濃くなって縮んでいく(重力収縮)ことで、速いペースで星ができてくると考えられています。 しかし、様々な研究から、銀河の中で星が生まれるペースは非常にゆっくりで、理論で示される様な速いペースでは無いことが知られています。 どの様な仕組みが働いて、銀河の中では星がゆっくりとしたペースでできているのか明らかにはなっていません。星のできるペースを調整している 仕組みについては、他の星からの影響、磁場、分子雲の中に生じる不規則な流れ(乱流)等が議論されています。 しかし、上記の仕組みがどの様に分子雲の構造と星のでき方に影響しているのか観測で明らかにすることが重要な問題として残されています。 銀河系内で星ができる仕組みを十分に理解するために、近傍にある分子雲Orion A、Aquila Rift、M17に関して12CO(1-0)、13CO(1-0)、 C18O(1-0)、N2H+(1-0)を用いた広視野マッピング観測を行い、分子雲の構造と物理的な条件を明らかにしようとしています。

2014-2017期野辺山観測所レガシープロジェクトのデータがリリースされました。

Orion A分子雲の12CO積分強度マップ(クレジット:米国国立科学財団)
(野辺山45m電波望遠鏡と米国CARMA電波望遠鏡システム
で得られたデータを統合して作成)

[野辺山観測所 COMING レガシープロジェクト]
私たちの研究グループは国⽴天⽂台野辺⼭宇宙電波観測所45 m 電波望遠鏡を使って127 個という 世界最⼤級の個数の銀河について電波写真を撮影しました。 銀河は天の川銀河のように多数の恒星と ガスから成り⽴っています。電波撮像観測を⾏うと、銀河を形作る恒星が⽣まれるもとになる低温の分⼦ガスが、 銀河の中のどこでどのように分布しているのか、また分⼦ガスの密度や温度といった性質を知ることができます。 これまでに撮られたデータからは、分⼦ガスの密度が低いため恒星を作りにくい領域が銀河内部のあちこちにあることがわかりました。 現在、最終のデータ解析中ですが、多数の銀河のデータを⽐較することで、銀河の中のどこでどのようにして恒星ができてきたのかということを 解明する⼿がかりが得られると期待されます。
COMING:CO Multi-line Imaging of Nearby Galaxies

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COMING プロジェクトで撮像した銀河の電波写真の例。(クレジット:COMING チーム)

[野辺山観測所 FUGIN レガシープロジェクト]
FUGIN (FOREST unbiased Galactic plane imaging survey with the Nobeyama 45 m telescope) プロジェクトは、 従来の10倍もの観測効率をもつ新たに搭載されたFOREST受信機を使い、45m電波望遠鏡の視力を生かして、 大規模かつ最も詳細な天の川の電波地図を作るプロジェクトです。このプロジェクトは、 次世代の研究の土台となるデータを残そうという野辺山観測所レガシープロジェクトのひとつとして採択され、 2014年から2017年まで1100時間にも渡って観測を実施しました。 観測領域は、銀緯±1°以下、銀経10〜50°、198〜236 °の約83%にあたる130平方度の範囲です。 角分解能は約20秒角、分子の速度分解能は1.3km/s であり、角分解能について従来の天の川観測と比較すると、 およそ3倍の精度※となっています。12CO, 13CO, C18Oの3つの一酸化炭素同位体分子を同時に観測し、 観測した分子ガスの分布や運動の様子だけでなく、温度や密度といった性質なども一挙に調査することがすることができます。

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FUGINプロジェクトで得られた電波強度マップ(クレジット:NAOJ/NASA/JPL-Caltech)
1701物理及び化学
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