観測装置の4倍拡張計画によりさらなる高感度測定へ
2020-07-28 京都大学
藤井俊博 白眉センター特定助教らの研究グループは、アメリカユタ州で稼働中の宇宙線検出器による11年間の定常観測において、北天(北半球)における最高感度で、極高エネルギー宇宙線がどの方向からより多く到来するかを探索しました。
宇宙空間に存在する放射線は宇宙線と呼ばれ、1秒間に手のひらに約1個という頻度で地上に到来しています。これまでの観測で1年間に500平方kmあたり約1個というとても低い頻度ですが、莫大なエネルギー(10の20乗電子ボルト)を有する「極高エネルギー宇宙線」の存在が明らかになりました。このエネルギーは、地上最大の粒子加速器で到達できるエネルギーより7桁も大きく、宇宙のどこかに存在する爆発的なエネルギーを生み出す極限宇宙現象が発生源と考えられています。本来、宇宙線は電荷を持つために宇宙磁場で曲げられ、発生源についての情報を失い、一様等方に地球へ到来します。しかし、宇宙線はエネルギーが増大するにつれて曲がり角が小さくなり、10の19乗電子ボルト以上では、45度の角度スケールで多く到来する方向と少ない方向(=大角度異方性)が現れると予想されていました。
本研究では、測定データの解析により、8.8×10の18乗電子ボルト以上のエネルギーの宇宙線が、赤道座標において赤経131度の方向から3.3%多く到来している結果が得られました。この測定結果は宇宙線の大角度異方性と銀河系外の宇宙線発生源の存在を示唆しますが、まだ統計量が十分ではありません。今後は年間観測事象数を4倍へ増やす拡張計画によって、さらなる高感度で極高エネルギー宇宙線の定常観測を継続していきます。
本研究成果は、2020年7月27日に、国際学術誌「Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。
図:本研究で得られた極高エネルギー宇宙線で観る宇宙の姿