2025-09-06 中国科学院(CAS)
中国科学院上海天文台の安涛博士らは、ごく近傍の矮小銀河(赤方偏移約0.017、約2.3億光年)において、銀河中心から約1キロパーセク離れた「さすらいブラックホール」を発見した。質量は太陽の約30万倍と推定され、中質量ブラックホールに分類される。この天体は銀河中心核から外れて存在するにもかかわらず、強力なジェットを放射する活動銀河核(AGN)として働いていることが確認された。電波観測に加え、数十年にわたる光度変動の解析により、持続的な降着活動が裏付けられた。他の3000以上の矮小銀河でもAGNの兆候は見られたが、「コンパクトな高輝度コア」「パーセク規模のジェット」「長期的変動」の三条件を満たす例は本事例のみである。この発見は、超大質量ブラックホールの成長が銀河中心だけでなく周辺でも進行し得ることを示唆し、銀河とブラックホールの共進化理解に新たな視点を与える。今後、FASTやSKAなど次世代望遠鏡による追跡観測が期待される。
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<関連情報>
- https://english.cas.cn/newsroom/research_news/phys/202509/t20250908_1054163.shtml
- https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095927325008989?via%3Dihub
矮小銀河におけるジェットを伴う移動型巨大ブラックホール候補
A jetted wandering massive black hole candidate in a dwarf galaxy
Yuanqi Liu, Tao An, Mar Mezcua, Yingkang Zhang, Ailing Wang, Jun Yang, Xiaopeng Cheng
Science Bulletin Available online: 4 September 2025
DOI:https://doi.org/10.1016/j.scib.2025.09.001


