2021-12-06 アメリカ合衆国・ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)
・ LBNL が、天然ガス・電力の使用や CO2 を排出することなく、市販のクールルーフシステムを超える省エネ効果を提供する、全季節型スマートルーフコーティングを開発。
・ 反射防止コーティング、メンブレンや屋根板等の現行のクールルーフシステムでは、家屋を涼しく保つ薄色や暗色の表面で太陽光を反射しているが、吸収した太陽熱を放射冷却により熱赤外放射として排出して冬季暖房費を押し上げている。
・ タングステンをドープした二酸化バナジウムによる新コーティングは、温度適応型放射コーティング(temperature- adaptive radiative coating: TARC)と呼ばれ、冬季の放射冷却を自動的に停止してエネルギーを節約し、過冷却の問題を解決する。
・ LBNL は、VO2 では電子が熱を伝えずに導電することを 2017 年に発見。このような電子の挙動は、伝熱性と導電性が比例する他の金属の多くでは観られない。VO2 は、約 67℃(153℉)を下回る温度で透明化して熱赤外光を吸収せず、67℃に達すると金属に相転移して熱赤外光を吸収するようになる相転移材料(PCM)。
・ スコッチテープのような TARC 薄膜(2cm×2cm)を作製し、昨年夏に実際の屋根に取り付けてその効果を実証。直接太陽光と屋外温度の変化に対する TARC サンプルと市販の暗色・白色ルーフサンプルの数日間の反応データをワイヤレス測定デバイスで収集した。
・ この実験データを基に、全米の 15 種類の気候帯を代表する都市における TARC の通年の効果のシミュレーションを実施。その結果、特に、日中と夜間の温度差の大きな地域(サンフランシスコベイエリア)、また冬季と夏季の温度差が大きな地域(ニューヨークシティ)の 12 種類の気候帯において TARC の性能が既存のルーフコーティングを上回ることを確認した。
・ TARC の導入により、米国の平均的な世帯では最大で 10%の電力の節約が可能に。25℃(77℉)以上の温暖な気温下では、通年で太陽光を約 75%を反射しながら約 90%の高い熱放射で上空への熱損失を促進。寒冷な気候では、熱放射率を低下させて太陽と屋内暖房による熱の維持を助ける。
・ TARC は、スマートフォンやラップトップの電池寿命の向上や、衛星・車輌を極暑・極寒の温度から保護する熱保護コーティングとしての利用や、テント、温室のカバー、帽子やジャケット等の温度調整ファブリックへの適用も考えられる。
・ 今後は TARC のプロトタイプを大規模開発し、実用的なルーフコーティングとしての性能を試験する予定。本研究は、米国エネルギー省(DOE) 科学局と Bakar Fellowship が主に支援した。
URL: https://newscenter.lbl.gov/2021/12/16/roof-year-round-energy-savings/
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Temperature-adaptive radiative coating for all-season household thermal regulation
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/science.abf7136