2025-02-28 東京大学,電気通信大学,科学技術振興機構
ポイント
- 量子系が熱浴と相互作用する量子開放系のダイナミクスにおいて、系を操作する速度とエネルギーコストの関係に対称性が与える影響を理論的に明らかにした。
- 対称性がもたらす熱力学的な優位性を統一的に取り扱い、その限界を求めることで、従来の研究で知られていた量子熱機関の性能をはるかに超える熱機関のモデルを構築した。
- 高速で動作しつつ省エネルギー性を実現するような熱デバイスや量子情報処理デバイスの設計原理につながることが期待される。
東京大学 大学院工学系研究科の布能 謙 講師と、電気通信大学 大学院情報理工学研究科の田島 裕康 助教は、エネルギーコストと系を操作する速度や熱が流れる速度の間に成り立つ熱力学的トレードオフ関係が対称性によって改善される原理およびその限界と、その限界を達成するために量子開放系が満たすべき対称性の条件を理論的に明らかにしました。本研究成果は、量子開放系における対称性の度合いによって熱力学的トレードオフ関係が改善され、より高速で動作しつつ低いエネルギーコストを実現できることを意味しています。このような対称性による熱力学的な優位性を一般的に示し、その限界を解明することで、古典力学に従って動作する熱機関をはるかに超える仕事率を実現しつつ、理想効率であるカルノー効率に近い効率を実現する量子熱機関のモデルを構築することに成功しました。本成果は、今後高速で動作しつつ省エネルギー性を実現するような熱デバイスや量子情報処理デバイスの設計原理につながることが期待されます。
本研究成果は、2025年2月27日(現地時間)に「Physical Review Letters」に掲載されました。
本研究は、科研費「学術変革領域B(課題番号:JP24H00830、JP24H00831)」、「若手研究(課題番号:P23K13036)」、科学技術振興機構(JST)「ERATO(課題番号:JPMJER2302)」、「さきがけ(課題番号:JPMJPR2014)」、「ムーンショット型研究開発事業(課題番号:JPMJMS2061)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(605KB)
<論文タイトル>
- “Symmetry induced enhancement in finite-time thermodynamic trade-off relations”
- DOI:10.1103/PhysRevLett.134.080401
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
布能 謙(フノウ ケン)
東京大学 大学院工学系研究科 講師
<JST事業に関すること>
永井 諭子(ナガイ サトコ)
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
電気通信大学 総務部 総務企画課 広報係
科学技術振興機構 広報課