2024-10-09 沖電気工業株式会社
OKIは、光回路の半導体であるシリコンフォトニクス技術を用いて、光ファイバーセンサー、レーザー振動計、光バイオセンサーなど、多様な用途に適用可能な超小型光集積回路チップの開発に成功しました。これにより、LSI(注1)のような超小型化・低消費電力化、大量生産による光センサーモジュールの圧倒的な低コスト化を実現できます。光センサーは、光損失の少ない光ファイバーや光導波路を用いて、光のまま振動や歪、温度などの物理現象を検出・処理・伝送する技術であり、それ自体が省エネルギーでセンシングを実現するグリーン技術になります。シリコンフォトニクス技術は、これまで局所的な活用に限られていた光センサーの適用領域を拡大できる技術であり、GX(注2)の進展への大きな貢献が期待できます。
社会インフラの老朽化や労働人口不足、環境問題、健康寿命の延伸など、現代社会が抱えるさまざまな課題に対し、高精度なセンサー技術と膨大なセンサーデータを円滑に収集するネットワーク技術が求められています。エネルギー損失が少ない光の性質を活用した高精度な光センサーは、これを実現する有効な技術の一つである反面、大型・高価であるため、研究用途や大規模インフラへの適用など一部への適用に留まっていました。
OKIは長年、光通信用トランシーバーを中心にシリコンフォトニクス技術の研究開発に取り組んできました。現在も研究対象にさまざまな光センサーを加え、開発を継続しています。シリコンフォトニクス技術は、個別の光部品を光ファイバーで配線することにより実現していた複雑な光回路を、半導体の微細加工技術を用いてシリコン基板上に統合・集積回路化する技術です。コンピューターに欠かせないLSIと同じ製造方法を用いるため、小型軽量化、省エネルギー化、大量生産による低コスト化が可能です。これまで大きく重厚でハンドリングの難しかった装置を、スマートフォンやタブレットのようなサイズ感で実現でき、光センサーの適用領域を飛躍的に拡大できます。
2023年11月にOKIは、「エッジプラットフォーム」の実現に向けた2031年までの技術戦略を発表しました。「エッジプラットフォーム」は、社会インフラを支えてきたOKIのコアコンピタンスである「タフネス」をベースに、エッジを高度化し、データを繋ぎ結びつけることで、提供価値を拡大していく技術コンセプトです。技術戦略の中では、社会インフラの監視から医療分野まで、幅広い領域における光センシング技術の強化を掲げています。今回の光集積回路チップの開発は、この技術戦略に基づき、シリコンフォトニクス技術を最大限に活用した成果になります。
OKIは、今後もシリコンフォトニクス技術を基盤に、シリコンとは異なる光源などの半導体材料まで含めた光集積回路の大規模化や、光電融合を進め、より多様な分野への展開を図っていきます。また最終的には、一つのチップにさまざまな機能をプログラマブルに実装できるユニバーサルな集積回路チップの実現を目指し、グリーン技術の中核として活用していきます。
なお本内容は、2024年10月に開催される「OKI WORLD 2024」にて光集積回路チップの展示を行い、レーザー振動計および光バイオセンサーの実動作デモを予定しています。光ファイバーセンサーやレーザー振動計、光バイオセンサー用の光センサーチップ、次世代光アクセスネットワーク用の光トランシーバーチップなど、多彩な設計の光集積回路チップをご覧いただけます。
シリコンフォトニクスで作製した様々な光集積回路チップの例
用途例
以下のような用途に適用可能です。
- 光ファイバーセンサー光集積による小型化、低価格化により、橋梁やトンネル、法面など、ありとあらゆる社会インフラのモニタリング・保守への適用拡大が可能
- レーザー振動計従来の光回路に対して体積比で約20万分の1の小型化ができ、ドローンやロボットへの搭載が可能なほか、一般的な振動計よりも広帯域な周波数特性を活かし、設備点検の高度化、省人化に貢献
- 光バイオセンサー多様で複数の異なるバイオ物質を迅速・簡易に判別可能で、バイオテクノロジー・ヘルスケア領域での検査高度化に貢献
- 光トランシーバー光アクセスネットワーク用の超小型・低コスト高速トランシーバーが実現でき、大容量データ通信に貢献
用語解説
注1:LSI(Large-Scale Integration:大規模集積回路)
シリコンなどの半導体チップ上に微細な電子部品や配線を高密度に集積したデバイス
注2:GX(Green Transformation)
温室効果ガスの排出を削減し、持続可能な社会を実現するための取り組み
- 本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
広報室 - 本件に関するお客様からのお問い合わせ先
- 技術本部研究開発センターフォトニクス研究開発部