2024-09-10 地震調査研究推進本部地震調査委員会
○ 8月8日 16 時 42 分に日向灘の深さ約 30km でマグニチュード(M)7.1 の地震が発生した。この地震により宮崎県で最大震度6弱を観測し、負傷者が出るなど被害を伴った。また、この地震により宮崎県南部山沿いで長周期地震動階級3を観測した。
○ 発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、発震機構及び震源の深さからフィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震と考えられる。
○ その後の地震活動は、M7.1 の地震の震源を含む東西約 80km、南北約 80km の領域で減衰しつつも継続しており、8月8日から9月 10 日 09 時までの間に、最大震度1以上を観測した地震が 28 回(震度6弱:1回)発生した。M7.1 の地震発生以降9月 10 日 09 時までに発生した最大の地震は8月9日 04 時 23 分に発生した M5.4 の地震である。また、日向灘では 1996 年 10 月 19 日に M6.9 の地震、1996 年 12 月3日に M6.7 の地震が発生し、いずれも被害を生じた。
○ 今回の地震により、宮崎港(港湾局)で 51cm、日南市油津(気象庁)で 40cm など、千葉県から鹿児島県にかけての太平洋側で津波を観測した。
○ GNSS観測によると、今回の地震に伴って、宮崎観測点(国土地理院)で東南東方向に 14cm 程度の変動が見られるなど、宮崎県南部で地殻変動が観測された。また、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析でも、宮崎県沿岸部で地殻変動が検出された。また、GNSS観測によると、 M7.1 の地震のあと、北郷観測点で東方向に約2cm の水平変動など宮崎県南部を中心に、余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。
○ 今回の地震の発震機構と地震波の解析、GNSS観測の解析結果及び津波波形の解析結果から推定される震源断層は、北北東-南南西方向に延びる長さ 20 ㎞程度の西北西傾斜の逆断層である。
○ 今回の地震は、震源位置、発震機構、M の大きさなどから、「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)(令和4年3月 25 日公表)」で地震調査委員会が想定していた地震(日向灘のひとまわり小さい地震)であると考えられる。なお、周辺では 1931 年 11 月2日に M7.1、1961 年2月 27 日に M7.0 の地震が発生していた。長期評価では、この領域では M7.0~M7.5 程度の地震が 30 年以内に発生する確率はⅢランク(*)で、海溝型地震の中では発生する確率が高いグ令和6 年 9 月 1 0 日地震調査研究推進本部地震調査委員会ループに分類されている。なお、日向灘周辺で 1662 年に発生した地震は M8 程度の巨大地震であった可能性がある。
*:海溝型地震における今後 30 年以内の地震発生確率が 26%以上を「Ⅲランク」、3%~26%未満を「Ⅱランク」、3%未満を「Ⅰランク」、不明(すぐに地震が起きることを否定できない)を「X ランク」と表記している。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称である。