フラーレンに迫る電子受容能をもつ 平坦な一次元π共役炭化水素の開発

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2023-05-15 京都大学アイセムス


フラーレンのような対称性や湾曲構造がなくとも、5員環の部分構造を維持すれば、フラーレンに匹敵する電子受容性を実現できることが明らかになった。(©️株式会社ヤップ)


京都大学アイセムス 深澤愛子教授、同 早川雅大 元特任研究員 (現 京都大学理学研究科助教)、同工学研究科 砂山尚之 元大学院生、髙木 周 大学院生、同工学部 松尾 優 学部生は、名古屋大学ITbM 山口茂弘 教授、同理学研究科 田巻明日佳 元大学院生、京都大学工学研究科 関 修平 教授らと協力し、フラーレンC60の一次元部分構造をもつ新たな有機材料の開発に成功しました。
フラーレンは多数の炭素原子からなる球状分子であり、優れた電子受容体として有機エレクトロニクス材料への応用が検討されてきました。フラーレンは他の多くの有機材料とは異なり、多くの電子を受け入れても分解しないという特徴を有していますが、この性質はフラーレン特有の球状構造に起因すると長らく考えられてきました。
本研究では、フラーレンの電子受容体としての特徴を実現するためには五角形の部分構造が重要であるとの考えのもと、フラーレンC60と五角形の連結様式が同じ一次元状の有機分子「オリゴビインデニリデン」を設計し、その合成に成功しました。この分子は、五角形の炭素骨格が一次元状に連なった構造をもち、C60よりも対称性がはるかに低く、個々の炭素原子も平坦な構造をもつにもかかわらず、五角形の数と同数までの電子を受容できることがわかりました。この成果を通して、フラーレンの電子受容体としての性質の根本を支えているのは五角形の部分構造であることを明らかにしました。
本研究で見出した分子設計手法は、炭化水素骨格のみで優れた電子受容性を実現できる新手法であることから、有機半導体や太陽電池、電池や触媒など、電子の輸送や授受がかかわる様々な機能性材料の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、英国時間2023年5月15日午前10時に英国科学誌Nature Communications 誌でオンライン公開されました。

詳しい研究成果について

フラーレンに迫る電子受容能をもつ 平坦な一次元π共役炭化水素の開発

書誌情報

論文タイトル:“Flattened 1D fragments of fullerene C60 that exhibit robustness toward multi-electron reduction”
(参考訳:多電子還元に対する堅牢性をもつ、フラーレン C60 の平らな一次元フラグメント)
著者:Masahiro Hayakawa, Naoyuki Sunayama, Shu I. Takagi, Yu Matsuo, Asuka Tamaki, Shigehiro Yamaguchi, Shu Seki, Aiko Fukazawa

Nature Communications |DOI: 10.1038/s41467-023-38300-3

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