2020-12-25 産業技術総合研究所
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)が実施している、中型自動運転バスによる実証実験*1(茨城県日立市ひたちBRT路線:茨城交通(株)*2、令和2年11月30日~令和3年3月5日予定)において、令和2年12月14日(月曜日)午前9時52分ごろに大甕(おおみか)駅付近にて発生しました、バスの右前方部分がガードレールに接触した事案に関し、原因調査結果及び対策について、外部有識者による意見も踏まえて、とりまとめましたので、お知らせします。
発生事案と状況
- バスは、令和2年12月14日午前9時50分に大甕駅西口を出発しました。常陸多賀駅方面に50メートルほど走行したところで、バスの右前方部分が右側ガードレールに接触しました。一般乗客は乗車しておらず、運転手含めた乗員3名にもけがはありませんでした。
- 今回の走路ではその特性により二つの位置推定手法(※)を使い分けていますが、事案発生地点はそれらの位置推定手法が切り替わる地点でした。
※GNSS方式とGNSSの受信がしにくい地点では磁気マーカー方式により位置を推定。 - 約30km/hの速度で自動走行中に、当該地点は直進区間であったが、ハンドルが右に急旋回し、運転手が速やかにブレーキ及びハンドル操作による介入をしたものの、間に合わずガードレールへの接触に至りました。
要因分析
- 車両開発事業者が走行前に自動運転システムを設定しましたが、位置推定を行うための情報(車両の位置や方向に関わる情報)を取得する二つの機器(※)の再起動が必要であるところ、一つの機器の再起動を行っていませんでした。そのため、再起動を行っていなかった機器で車両の位置や方向に関する情報を取得できず、情報が更新されていませんでした。
※GNSSの受信機と磁気マーカーの受信機。今回、磁気マーカーの受信機の再起動を行っていませんでした。 - その結果、事案発生地点で位置推定手法の切り替えが生じた際に、更新される前の車両の位置や方向に関する情報が使用され、それに基づき車両制御が行われ、ハンドルが誤って急旋回したことが事案発生の原因となります。なお、この原因については、現場での検証を行い、再現を確認しました。
対策
- 今回直接的な原因となった車両の位置や方向に関する二つの機器については、一つの機器の再起動時に、もう一つの機器の再起動の確認を要求する表示を出すようにシステムを改善します。
- 走行速度が速い場合や走路が直進である場合には、自動運転システムによるハンドル操舵量が大きなものにならないよう、走行速度や走路に応じた操舵量の指示や制御の制限を行います。
- また、実証実験を行う上では本対策も含め必要な安全対策を実施するとともに、事業化に向けては、自動運転システム全体について事業を行っていく中で生じうる様々なリスクを洗い出し、必要な対策を行っていきます。
今後、このような事案が発生しないように、上記の対策を適切に実施するとともに、実証実験関係者に対し安全マニュアル等の遵守を徹底することで、安全確保に努めてまいります。日立市での実証実験の再開に当たっては、上記の対策が適切に実施されているかなど、十分な安全対策がとられていることを確認することといたします。
今回の事案では、近隣の方々らに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
※1:経済産業省および国土交通省の「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」の一環で、産総研が幹事機関として受託しているものです。なお、実証における中型自動運転バスは、先進モビリティ(株)が産総研からの再委託を受け、中型路線バスを改造し、自動運転化(レベル2)を行ったものです。
※2:茨城交通(株)は、中型自動運転バスによる実証評価に係るバス運行事業者として、令和元年10月16日に他の4事業者と共に選定され、本実証は茨城交通株式会社と産総研との役務契約に従って実施しております。
日立市での中型自動運転バスの実証走路・事案発生場所およびバス、ガードレールの接触箇所
本件問い合わせ先
広報部報道室:山口