黒い塗装で人工衛星の反射光が軽減されることを実証

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2020-12-08 国立天文台

2020年4月10日にむりかぶし望遠鏡で撮影したスターリンク衛星の飛跡

2020年4月10日にむりかぶし望遠鏡で撮影したスターリンク衛星の飛跡(右上から左下に伸びる直線)。スターリンクは米国のスペースX社による衛星コンステレーション計画の一つ。(クレジット:国立天文台)

石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡による観測で、黒く塗装した人工衛星は塗装していないものに比べて、太陽光の反射率が半分程度に抑えられていることが実証されました。多数の人工衛星の運用が天体観測に影響を及ぼすと危惧されていますが、その影響の軽減が期待できます。

近年、宇宙利用の需要が高まり、多数の人工衛星を打ち上げて運用する衛星コンステレーション計画がいくつも立案、実行されています。人工衛星は太陽光を反射して輝くため、天体観測への影響が危惧されています。こういった影響を軽減するために、表面を黒く塗装した人工衛星・ダークサットが、2020年1月に試験的に打ち上げられました。塗装によって天体観測への影響がどのように軽減されるか、実測による調査が必要です。これまでに、人工衛星の明るさの測定はされてきたものの、黒い塗装による具体的な効果について、詳細な調査はされていませんでした。

石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡は、天体の明るさを3つの色(波長帯)で同時に測定することができます。同じ条件で取得した複数の色の情報を用いて人工衛星の明るさを評価することで、その塗装前後の変化をより良い精度で把握できます。こういったむりかぶし望遠鏡の特色を生かした人工衛星の観測を、2020年4月から6月にかけて行いました。その結果人工衛星は、黒く塗装すると表面の反射率が半分程度に抑えられること、そして塗装の有無によらず長い波長ほど明るく見える傾向があることが、世界で初めて明らかになりました。このような塗装を施すことで、天体観測への影響が軽減されることが期待できます。今後もさまざまな対策を講ずることで、宇宙利用と天文学が共存する未来が開拓されることでしょう。

この研究成果は、Horiuchi T. et al. “Simultaneous Multicolor Observations of Starlink’s Darksat by The Murikabushi Telescope with MITSuME”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2020年12月7日付けで掲載されました。

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