2020-12-08 神戸大学,大阪大学,科学技術振興機構
ポイント
- 人工知能を活用した物理現象の予測が可能となれば、シミュレーションの高精度化・高速化につながる。
- 今までの方法では、デジタル化の影響でエネルギー保存則などの物理法則が成り立たず、予測結果が過大・過小評価になりやすかった。
- 本研究では、デジタル的な解析学を活用して、コンピュータの扱えるデジタル世界で物理学を再現し、物理法則を保証しながらシミュレーションを行う人工知能技術を開発した。
- これにより、詳細なメカニズムや方程式が未解明の現象(波の伝搬、亀裂の進展、結晶構造の成長など)であっても、十分な観測データが取得できれば、シミュレーションが可能になると期待される。
神戸大学 大学院システム情報学研究科の谷口 隆晴 准教授、大阪大学 大学院基礎工学研究科の松原 崇 准教授らの研究グループは、人工知能を利用して、詳細なメカニズムや方程式が未解明の現象に対して観測データから物理法則に忠実なモデルを作成し、シミュレーションを行う技術の開発に成功しました。
今後、これまで詳細なメカニズムが不明だったためにシミュレーションが難しかった現象の予測が可能となり、また、シミュレーション自体も高速化されることが期待されます。
この研究成果は、2020年12月7日(米国太平洋時間)から開催される、人工知能技術に関するトップ会議である「Thirty-fourth Conference on Neural Information Processing Systems(NeurIPS 2020)」で発表される予定です。NeurIPS 2020投稿論文9454件、採択論文1900件のうち、上位約1.1パーセント、105件のみが該当するoral枠で採択されました。
本研究は、以下の支援を受けて行われました。
JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域:「数学・数理科学と情報科学の連携・融合による情報活用基盤の創出と社会課題解決に向けた展開」(研究総括:上田 修功)
研究課題名:「幾何学的離散力学を核とする構造保存的システムモデリング・シミュレーション基盤」(JPMJCR1914)
研究代表者:谷口 隆晴
JST 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
研究領域:「社会的課題の解決に向けた数学と諸分野の協働」(研究総括:國府 寛司)
研究課題名:「情報幾何学と離散力学の融合と社会ネットワーク解析への応用」(JPMJPR16EC)
研究者:谷口 隆晴
日本学術振興会(JSPS) 科研費
研究課題名:「深層学習に内在する不確実性の利用と制御によるデータ構造理解と異常検知への応用」(19K20344)
研究代表者:松原 崇
研究課題名:「ブラックボックス微分方程式モデルに対する保存則抽出手法とネットワーク解析への応用」(20K11693)
研究代表者:谷口 隆晴
<論文タイトル>
- “Deep Energy-based Modeling of Discrete-Time Physics”
Advances in Neural Information Processing Systems 33 (NeurIPS 2020)
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
谷口 隆晴(ヤグチ タカハル)
神戸大学 大学院システム情報学研究科 計算科学専攻 准教授
松原 崇(マツバラ タカシ)
大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 准教授
<JST事業に関すること>
舘澤 博子(タテサワ ヒロコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ
<報道担当>
神戸大学 総務部 広報課
大阪大学 基礎工学研究科 庶務係
科学技術振興機構 広報課