(Membrane Technology Could Cut Emissions and Energy Use in Oil Refining)
2020/7/16 アメリカ合衆国・ジョージア工科大学(GeorgiaTech)
・ Georgia Tech、英国・インペリアルカレッジロンドン、エクソンモービル社による研究チームが、原油精製プロセスに伴う CO2 排出量やエネルギー消費量の低減に役立つ新しいポリマーメンブレン技術を開発。
・ 加熱による蒸留操作を通じた精留は、世界のエネルギー消費の 1%近く(1,100TWh/yr: ニューヨーク市の年間エネルギー総消費量に相当)を占める大規模でエネルギー集約的なプロセス。このプロセスの特定のステップを低エネルギーメンブレンで代替することで、従来プロセスの CO2 排出量やエネルギー消費量の大幅な低減に資するハイブリッド精製システムの実現が期待できる。
・ メンブレン技術は既に海水淡水化等で広く利用されているが、複雑な原油精製では同技術の適用が制限されていた。
・ 窒素原子と炭素原子を結合させるプロセスを通じ、縺れた構造状態の構成要素を接合してスピロ環状ポリマーを構築し、固有の空隙を備えた不規則な構造の材料を開発。同ポリマー材料を強力な基板に貼り付け、熱の代わりに圧力を用いて複合的な炭化水素混合物を分離できるメンブレンを作製。
・ 様々な要因を釣り合わせることで、簡易でスケーラブルな処理方法によるメンブレン形成を可能にする可溶性と、小さな分子を容易に通過させるための構造の剛性の適切な組み合わせを特定した。また、若干の柔軟性を付与することで、分子サイズの識別能力と、原油に多く含まれる特定のタイプの分子に僅かに張り付く機能を向上させた。
・ ガソリン、ジェット燃料やディーゼル燃料混合物での同メンブレン技術の試験を経て、原油サンプルの分離を試したところ、複合的な混合物からガソリンとジェット燃料を効果的に回収できることを確認。
・ 同ポリマーを 200nm の薄膜にし、ロール・ツー・ロールプロセスによりメンブレンモジュールに統合。このメンブレンサンプルを 3 ヵ所の研究施設で試験し、メンブレン機能の認証を獲得した。
・ 同研究チームは、ミリグラム規模の粉末から実際の原油で試験できる商用仕様のメンブレンモジュールプロトタイプ作製まで、基礎的な研究を実環境で試験できる技術にまで拡張するイノベーションの経路を確立した。
・ エクソンモビール社と Georgia Tech は 15 年間近く共同研究を実施しており、アルキル芳香族の分離に要するエネルギーを大幅に低減する炭素ベースの分子ふるいメンブレン等の分離技術を開発している。
URL: https://news.gatech.edu/2020/07/16/membrane-technology-could-cut-emissions-andenergy-use-oil-refining
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
N-Aryl–linked spirocyclic polymers for membrane separations of complex hydrocarbon mixtures
URL: https://science.sciencemag.org/content/369/6501/310
Abstract
The fractionation of crude-oil mixtures through distillation is a large-scale, energy-intensive process. Membrane materials can avoid phase changes in such mixtures and thereby reduce the energy intensity of these thermal separations. With this application in mind, we created spirocyclic polymers with N-aryl bonds that demonstrated noninterconnected microporosity in the absence of ladder linkages. The resulting glassy polymer membranes demonstrated nonthermal membrane fractionation of light crude oil through a combination of class- and size-based “sorting” of molecules. We observed an enrichment of molecules lighter than 170 daltons corresponding to a carbon number of 12 or a boiling point less than 200°C in the permeate. Such scalable, selective membranes offer potential for the hybridization of energy-efficient technology with conventional processes such as distillation.