テラヘルツ波がスピン流に変換される機構を実証・解明 ~通信、メモリー技術を革新する“スピントロニクス”発展に寄与~

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2024-12-18 名古屋大学

テラヘルツ波がスピン流に変換される機構を実証・解明 ~通信、メモリー技術を革新する“スピントロニクス”発展に寄与~

名古屋大学大学院工学研究科の森山 貴広 教授、服部 冬馬 博士前期課程学生、夛田 圭吾 学部生らの研究グループは、福井大学遠赤外領域開発研究センター・石川 裕也 講師、藤井 裕 教授、山口 裕資 准教授、立松 芳典 教授、東北大学金属材料研究所・木俣 基 准教授(当時)、木村 尚次郎 准教授、京都大学化学研究所・菅 大介 准教授、東邦大学理学部・大江 純一郎 教授らとの共同研究で、反強磁性体磁化ダイナミクスから生じるスピン流の検出に成功し、これまで知られていなかった反強磁性体におけるスピンポンピング効果によるテラヘルツ波⇒スピン流変換現象の微視的機構を明らかにしました。
テラヘルツ波はbeyond 5G注4)などの大容量・高速通信を担う周波数帯の電磁波です。反強磁性体はその磁気共鳴周波数がテラヘルツ領域にあるため、テラヘルツ波に応答する磁性材料として注目されています。
本研究では、反強磁性体α-Fe2O3(酸化第二鉄/ヘマタイト)の二つの磁化ダイナミクスモードに着目し、それらのダイナミクスから生じるスピン流を検出することで、反強磁性体におけるスピンポンピング効果の発現機構を明らかにしました。本成果は、テラヘルツ技術とスピントロニクス技術を融合した“テラヘルツスピントロニクス”の核心であるテラヘルツ波⇒スピン流変換を実証し、その機構を解明した極めて重要なマイルストーンとなるものです。本成果で得られた反強磁性体スピンポンピング効果の理解を基礎として、応用上重要であるテラヘルツ波⇒スピン流変換効率向上を目指す研究への展開や、反強磁性磁化とスピン流の相互作用物理のさらなる理解につながることが期待できます。
本研究成果は、2024年12月18日午前1時(日本時間)付国際学術誌『Physical Review Letters』に掲載されました。

【ポイント】

・反強磁性体磁化ダイナミクス注1)から生じるスピン流注2)の検出に成功
・スピンポンピング効果注3)によるテラヘルツ波⇒スピン流変換現象の発現機構を解明
・テラヘルツ波⇔スピン流変換インターフェースの効率向上に期待

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

【用語説明】

注1)反強磁性体磁化ダイナミクス:
反強磁性体は隣り合う磁気モーメント注6)の大きさが等しく、それぞれ反平行に結合している磁性体です。一方の磁気モーメントはもう一方の磁気モーメントから強い交換結合による交換磁場を受けるため、これらの集団的な磁気モーメントの運動(磁化ダイナミクス)の共鳴はサブテラヘルツ~テラヘルツ周波数に達します。

注2)スピン流:
電荷の流れである電流に対して、スピン角運動量の流れのこと。

注3)スピンポンピング効果:
磁化ダイナミクスにより電子スピンの流れ(=スピン流)が生成される現象。

注4)beyond 5G:
移動体向けのモバイル通信規格「5G」(5th Generation=第5世代移動通信システム)の次の世代の通信規格。通信周波数としては30~300GHz、所謂サブテラヘルツ~テラヘルツ帯が有望とされています。

注6)磁気モーメント:
磁力の大きさと方向を表すベクトル量。

【論文情報】

雑誌名: Physical Review Letters
論文タイトル: Inter- and intra-sublattice spin mixing conductance of antiferromagnetic spin pumping effect in α-Fe2O3/Pt
著者:T. Hattori1, A. Fukuoka2, K. Kawagita2, K. Tada1, Y. Ishikawa2, Y. Yamaguchi2, Y. Tatematsu2, Y. Fujii2, M. Kimata3, S. Kimura3, D. Kan4, J. Ohe5, T. Moriyama1
1. 名古屋大学、2.福井大学、3.東北大学、4.京都大学、5.東邦大学
DOI:doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.256701

【研究代表者】

大学院工学研究科 森山 貴広 教授

1700応用理学一般
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