2024-07-03 愛媛大学
愛媛大学大学院理工学研究科の高市合流さん及び地球深部ダイナミクス研究センターの西原遊教授らの研究グループは、マントル深部の高温高圧では、主要なシリカ鉱物SiO2スティショバイトに1wt%を超える多量の水は溶解しないことを明らかにしました。
近年、地球下部マントルでの水輸送の担い手の候補としてSiO2スティショバイトが注目されています。しかし、先行研究によって報告されている含水量や安定領域は見解が不一致なままでした。そこで研究グループでは、SPring-8の放射光X線を用いた水飽和系でのその場観察実験を行い、高温高圧下での含水SiO2スティショバイトの安定性を調査しました。その結果、水の溶解に伴う格子体積の過剰な膨張は600℃以下でのみ観察され、温度の上昇および時間経過によって急速に減少することを発見し、下部マントルの平均的な温度では、SiO2スティショバイトが安定に1wt%以上の水を保持する可能性は低いことが明らかになりました。
ポイント
・高温高圧その場X線観察実験から水飽和系におけるSiO2スティショバイトの格子体積変化を決定しました。
・SiO2スティショバイトの水の溶解に伴う大きな体積膨張は600℃以下でしか観察されず、それ以上の高温では水がほとんど溶解しないことが分かりました。
・SiO2スティショバイトが下部マントル最上部において安定相として1wt%以上の水を保持する可能性は低いことが明らかとなりました。
含水SiO2スティショバイトの脱水と格子体積変化
論文情報
掲載誌:Earth and Planetary Science Letters
題名:Limited stability of hydrous SiO2 stishovite in the deep mantle
(和訳)マントル深部における含水SiO2スティショバイトの限られた安定性
著者:Goru Takaichi, Yu Nishihara, Kyoko N. Matsukage, Masayuki Nishi, Yuji Higo, Yoshinori Tange, Noriyoshi Tsujino, Sho Kakizawa
DOI:10.1016/j.epsl.2024.118790
URL:https://authors.elsevier.com/a/1j9ua,Ig4YxEt
本件に関する問い合わせ先
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
高市合流、 西原遊