2023-07-20 物質・材料研究機構
NIMSは、ロボット実験装置と材料探索用人工知能 (AI) を人が介入することなく連携させ、自律自動材料探索を可能とするための汎用ソフトフェア、NIMS-OS (NIMS Orchestration System) を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しました。
概要
- NIMSは、ロボット実験装置と材料探索用人工知能 (AI) を人が介入することなく連携させ、物質・材料研究機構を可能とするための汎用ソフトフェア、NIMS-OS (NIMS Orchestration System) を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しました。
- 材料開発のDXが注目され、DXを加速する基盤技術の開発が重要になっています。材料を合成し、評価までを自動で行うロボット実験装置の開発や、既存の材料データを解析し、次に検討すべき材料を提案する材料探索用AIの開発が活発化しています。一方で、ロボット実験装置と材料探索用AIは、各々の開発が個別に進められてきたため、双方が有機的に連携していないことがシステム全体の問題となっていました。
- 今回研究チームは、ロボット実験装置および材料探索用AIなど、それぞれをモジュールとして扱うことで、任意のロボット実験装置とAIの組み合わせにおいても、自律自動材料探索を容易に実施可能とするミドルウェアNIMS-OSを開発しました。材料探索用AIとしては、ベイズ最適化手法を含め、3種類のプログラムが標準的に搭載されています。また、独自に作成した材料探索用AIも実装できるため、新しいアルゴリズムを開発した際に、即座にロボット実験装置に適用することができます。
- 研究チームは、NIMS-OSの有効性を実証するためのモデル実験として、NIMS電気化学自動実験ロボット (NAREE) をNIMS-OSで制御し、リチウム金属電極用電解質の探索を実施しました。NIMS-OSを利用することで、ロボットとAIのシームレスな連携が可能となり、ベイズ最適化手法を用いた電解質探索の自律自動実験に成功しました。
- 今後、日本国内外の様々なロボット実験装置との連携機能ならびに、NIMSが開発した研究データ自動蓄積システムRDEへのデータ転送機能をNIMS-OSに実装することで、データ利活用による材料開発プラットフォームを形成し、材料探索の加速化・革新材料の発見に貢献します。
- 本研究は、データ駆動型アルゴリズムチーム 田村亮チームリーダー、津田宏治NIMS招聘研究員 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 教授) 、電気化学スマートラボチーム 松田翔一チームリーダーからなる研究チームによって行われました。
- 本研究成果は、Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌において、2023年7月20日 (日本時間) にオンライン掲載されました。NIMS-OSは、GitHub (https://github.com/nimsos-dev/nimsos)で公開しています。
プレスリリース中の図 :NIMS-OSが築く材料探索用AIとロボット実験のシームレス連携
掲載論文
題目 : NIMS-OS: An automation software to implement a closed loop between artificial intelligence and robotic experiments in materials science
著者 : Ryo Tamura, Koji Tsuda, and Shoichi Matsuda
雑誌 : Science and Technology of Advanced Materials: Methods
掲載日時 : 2023年7月20日 (日本時間) オンライン掲載
DOI : 10.1080/27660400.2023.2232297