2023-02-28 国立天文台
原始星G358-MM1を取り巻く渦巻き円盤。画像中央の白い十字が、原始星の位置を示している。観測者から遠ざかる部分を赤、近づく部分を青で表しており、円盤全体が回転している様子が分かる。渦巻き模様を見やすくするために、渦巻きの腕をグレーの線でなぞっている。(Credit : R. A. Burns) オリジナルサイズ(190 KB)
VLBI観測を新しい手法で解析することで、大質量の原始星を成長させる渦巻き円盤の姿が描き出されました。大質量星が形成される過程を明らかにする大きな一歩です。
太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星は、太陽程度の質量の星と同様、原始星を取り巻くガスと塵(ちり)でできた円盤の中心で形成されます。円盤から原始星へとガスや塵が降着し原始星の成長が進むペースは、大質量星の場合、一定ではないと予想されています。2019年、原始星「G358-MM1」において、間欠的に大量の降着が起こる現象が観測されました。その追跡観測は、世界中で徹底的に行われました。
国立天文台の研究者が主導する国際共同研究チームは、世界中の電波望遠鏡を用いてG358-MM1のVLBI観測を行いました。そして得られたデータを新しい手法で解析した結果、G358-MM1を取り巻く円盤に渦巻き模様があることを発見したのです。渦巻き模様を持つ円盤からは、原始星への降着が間欠的に起こると考えられています。今回の発見により、大質量星が形成される過程で、間欠的な降着が重要であると確かめられたことになります。
研究チームは今後、重い原始星を取り巻く円盤で起こる間欠的な降着を多数発見し、新しい手法を駆使して円盤の構造を明らかにしていきたいと考えています。
この研究成果は、R. A. Burns et al. “A Keplerian disk with a four-arm spiral birthing an episodically accreting high-mass protostar”として、英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に2023年2月27日付で掲載されました。