2025-05-28 森林総合研究所,大日本除虫菊株式会社(KINCHO)
森林総合研究所は2025年5月28日、市販のノズル型殺虫剤『園芸用キンチョールE®』を用いたナラ枯れ対策について発表しました。ナラ枯れは、カシノナガキクイムシが媒介する病原菌によりナラ類の樹木が枯死する現象で、全国的に被害が拡大しています。今回の研究では、同殺虫剤を樹幹に注入することで、カシノナガキクイムシの駆除に効果があることが確認されました。この方法は、専門的な機器や技術を必要とせず、市民が主体となって実施できる点が特徴です。特に、神社仏閣や公園など、重機の使用が難しい場所での樹木保護に有効とされています。森林総合研究所は、今後も市民と連携し、ナラ枯れの被害拡大防止に取り組む方針です。
図1 生きているコナラの樹に穿入したカシノナガキクイムシに対して園芸用キンチョールE®を注入した時の駆除効果
<関連情報>
- https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2025/20250528/index.html
- https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2025/20250528/documents/20250528press.pdf
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/ffpri/24/1/24_15/_article/-char/ja/
生立木樹幹に穿入したカシノナガキクイムシに対する市販ノズル型殺虫剤の効果
北島 博 , 衣浦 晴生, 滝 久智, 松本 剛史
森林総合研究所研究報告 J-STAGE公開日: 2025/03/27
DOI:https://doi.org/10.20756/ffpri.24.1_15
抄録
生立木の樹幹に穿入しているカシノナガキクイムシに対して、市販のノズル型殺虫剤を施用した時の殺虫効果を確認した。試験を複数種のブナ科樹木へ穿入したカシノナガキクイムシの穿入孔で実施し、穿入後の時間経過が異なる孔も設けた。商品に付属のノズルを用いて穿入孔に殺虫剤を注入したのち、孔からのフラスの排出の有無を、注入4~6週後まで毎週1回観察した。その結果、樹種や穿入後の時間経過にかかわらず、各試験の調査最終週におけるフラス排出率は、殺虫剤注入孔では0~10 % と非常に低かったのに対し、無注入孔では25~89 % と高かった。このことから、本方法には樹幹内のカシノナガキクイムシへの高い殺虫効果があると考えられた。