2024-11-08 IHI技術情報
IHIは,再生可能エネルギー(以下,再エネ)由来のグリーン水素を原料としてCO2フリーのアンモニアを製造する装置を開発しました。このたび,そうまIHIグリーンエネルギーセンター(福島県相馬市,以下「SIGC」)(*1)内の水素研究棟「そうまラボ」で小型スケールでの試験を実施し,目標とした効率でグリーンアンモニアを製造できることを確認しました。
現在,アンモニアは天然ガスを改質して製造した水素と空気中の窒素をもとに製造されており,その製造過程では天然ガス由来のCO2が排出されています。カーボンニュートラル社会の実現のためには燃料の脱炭素(*2)が必要であり,この実現にはCO2が排出されないグリーンアンモニアの製造法の開発が不可欠です。再エネを利用しやすいエネルギーに変換するPower-to-X技術を用いたグリーンアンモニア製造は,CO2を排出しないアンモニア製造方法として期待されています。
IHIでは,負荷変動のある再エネの電気を熱や水素に変換し,効率良くエネルギーを利用するPower-to-X技術の確立を進めています。これまでに再エネから変換した熱を使い,相馬市下水処理場の汚泥を乾燥し減容化・肥料化したり,水電解装置を用いて製造した水素とCO2から合成メタンを製造し地域コミュニティバスへ燃料を供給(*3)したりといった実証事業に取り組んできました。このたび,そうまラボ内に,Power-to-X技術を用いたグリーンアンモニア製造試験装置(*4)を設置し,水素製造からアンモニア合成までの一連のプロセスを検証するための試験により,目標としていた効率でアンモニアが製造できることを確認しました。
今後さらに試験を続け,製造プラントの運転条件の最適化や反応器データの取得などを行い,プロセス全体の検証を進めていきます。グリーンアンモニア製造手法の一つとして,Power-to-Xを使った本技術も早期の大型化・商用化を目指し研究開発を加速してまいります。
図1. グリーンアンモニア製造試験装置 反応器
図2. Power-to-X技術によるエネルギー変換
(*1) そうまIHIグリーンエネルギーセンターについて
所在地:福島県相馬市光陽 2-1-1,敷地面積:1,200㎡
事業内容:2018年4月に開所し,持続性のある地産地消型スマートコミュニティ事業により「水素を活用したCO₂フリーの循環型地域社会創り」を実践。
2020年に開所した「そうまラボ」では,水素利用の先進技術開発拠点として,余剰電力で製造した水素を使用し,将来の水素社会を見据えた水素利用・エネルギーキャリア転換技術研究・実証試験等を実施。
SIGC開所:https://www.ihi.co.jp/all_news/2018/other/1190445_1626.html
そうまラボ開所:https://www.ihi.co.jp/all_news/2020/other/1196903_1611.html
(*2) 燃料の脱炭素
アンモニアの燃料利用 | 気候変動への対策 | 環境 | サステナビリティ | 株式会社IHI
(*3) 合成メタンによる地域コミュニティバスへの燃料供給
(*4) グリーンアンモニア製造試験装置
原料ガス 水素,窒素,圧力 20MPa,触媒 Fe系触媒,アンモニア製造量 1kg/日
【関連論文】
IHI技報 第61巻 第2号(2021年)
水素活用型分散型エネルギーシステムの開発