化学合成DNAを高速で安価に生産可能な核酸合成機を開発

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微生物由来の高機能医薬品原料や工業材料などの開発加速に期待

2018-10-09  新エネルギー・産業技術総合開発機構,神戸大学,日本テクノサービス株式会社

NEDOと神戸大学、日本テクノサービス(株)は、微生物由来の高機能医薬品原料や工業材料の製造に必要な化学合成DNAを効率的に生産可能な核酸合成機を開発しました。

この合成機の活用により、200の塩基からなるDNA96本を、従来の半分以下の時間と10分の1のコストで一括合成できます。これにより、数万~数十万の塩基対で構成する長鎖DNAの大量生産が可能となり、生物機能を活用した高機能の医薬品・化学品や新たな有用物質を生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」への貢献が期待されます。

今回の成果をもとに、日本テクノサービス(株)は「M-96-LD 長鎖DNA合成用核酸合成機」として製品化しました。

M-96-LD 長鎖DNA合成用核酸合成機の図

図 M-96-LD 長鎖DNA合成用核酸合成機

1.概要

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出した「スマートセル」を構築し、既存の化学技術では生産が難しい有用物質の創製、または従来の生産手法の飛躍的な改善を目的に、基盤技術および特定の生産物質における実用化技術の研究開発プロジェクト※1を推進しています。

本プロジェクトにおいて、国立大学法人神戸大学と日本テクノサービス株式会社は、研究テーマ「高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」※2に参画し、長鎖DNA※3合成の開発に取り組んでいます。近年ゲノム編集技術の発展により、複数の遺伝子を集積して細胞へ導入することが可能になり、その技術を使って低コストで、生物機能を活用した有用物質や現存しない新たな物質を生産することが可能となっています。多数の遺伝子を一度に細胞へ導入するには、長鎖DNAが用いられますが、その作成には多くの化学合成DNA※4が必要です。

そこで、NEDOと神戸大学、日本テクノサービス(株)は、従来型核酸合成機の洗浄プロセスや送液機構などの改良、核酸試薬の濃度・送液量などの化学反応条件の最適化を行い、このほど化学合成DNAを効率的に生産可能な核酸合成機(図)を開発しました。これにより200の塩基で構成する化学合成DNA96本の合成に、従来は40時間以上要していた工程を半分の20時間以内に短縮し、一括合成できるようになりました。また、合成コストも従来と比較して10分の1となり、長鎖DNAを構成する化学合成DNAを短時間で安価に生産することが可能となりました。日本テクノサービス (株)はこの成果をもとに、「M-96-LD 長鎖DNA合成用核酸合成機」として製品化しました。

短時間で低コストでの合成が可能な長鎖DNA合成用核酸合成機の活用により、細胞内で高機能物質を大量生産することが可能となり、生物機能を活用して高機能な医薬品・化学品や新たな有用物質を生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」への貢献が期待されます。

なお本成果については、10月10日からパシフィコ横浜で開催される「BioJapan 2018」のNEDOブースで試作品を展示します。

2.「BioJapan 2018」の開催概要
日時:2018年10月10日(水)~12日(金) 各日10時00分~17時00分
場所:パシフィコ横浜 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
NEDOブース小間番号:展示ホールD D-29
【注釈】
※1 研究開発プロジェクト
事業名 : 植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発
期間 : 2016~2020年度
概要 : 植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出した「スマートセル」を構築し、化学合成では生産が難しい有用物質の創製、または従来法の生産性を凌駕することを目的に、基盤技術および特定の生産物質における実用化技術の研究開発プロジェクト。将来的に持続可能な社会の構築に資するスマートセルによるものづくり「スマートセルインダストリー」の実現を目指している。
※2 研究テーマ「高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」
事業名 : 植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発 / 高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発
期間 : 2016~2020年度
委託先 : 国立大学法人神戸大学、日本テクノサービス株式会社他
※3 長鎖DNA
長鎖DNAは、一般的に100塩基程度のDNA断片を化学合成し、それらをつなぎ合わせるためPCR反応で増幅を繰り返すことで作成されます。微生物由来の遺伝子は平均1000塩基対程度であり、数万塩基対の長鎖DNAともなると数十の遺伝子をひとまとめにすることも可能で、さまざまな生合成経路が微生物に導入できる可能性があります。
※4 化学合成DNA
4種類のヌクレオシドのビルディング・ブロックのいずれかを1つずつ合成途上末端に連結・伸長していく手法を利用して合成したDNA。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:林、齋藤

国立大学法人神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 上住 敏士

日本テクノサービス株式会社 森 良仁

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本

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