2025-01-14 京都大学
蓑輪陽介 白眉センター/理学研究科特定准教授、安井裕貴 大阪大学博士前期課程学生(研究当時)、 芦田昌明 同教授および中川朋 大阪市立大学後期博士課程学生(研究当時)、乾聡介 米国国立高磁場研究所(National High Magnetic Field Laboratory)博士(兼:米国フロリダ州立大学(Florida State University)博士)、坪田誠 大阪公立大学教授から構成される研究グループは、極低温の超流動ヘリウム中の量子渦を「揺さぶる」ことで、渦の中心線(渦糸)がらせん状に揺れ動く、ケルビン波と呼ばれる状態を初めて意図的に生み出すことに成功しました。また、ケルビン波のらせん状の3次元的な振動の様子を明らかにしました。さらに、このケルビン波の観測を通じて、量子渦の回転方向を実験的に確定する技術を確立しました。量子渦は、超流動ヘリウムの物理の根幹を担う重要な研究対象です。類似の構造は超伝導体中にも存在し、量子渦の理解は低温物理学における中心的課題の一つです。ケルビン波は、量子渦を理解する上で非常に重要であるにも関わらず、これまで実験的に研究するための手法が無く、その性質がよく調べられてきませんでした。本研究により、144年前に理論的に提唱されたケルビン波を、量子渦という理想的な渦上で生み出すことに成功しました。今後、量子渦の実験的研究の大きな発展が期待されます。
本研究成果は、2025年1月13日に、国際学術誌「Nature Physics」にオンライン掲載されました。
本研究のイメージ図。渦の中心線がらせん状に変形している。渦の中心線に並ぶ微粒子を利用する。
研究者のコメント
「量子渦が実際に揺れ動く様子を初めて確認できたときには、非常に驚きました。『渦』と『らせん』という似ているようで異なる構造の関係を3次元的に直接観測することができたのは幸運でした。紆余曲折を経て、この結果にたどり着くことができたのは、共同研究者を含めた多くの人の助けのおかげです。本成果を基盤に、今後も低温物理学と光物性物理学を融合するような研究を進めていきます。」(蓑輪陽介)
詳しい研究内容について
量子の渦糸を揺さぶると「らせん」が現れる―144年越しのブレークスルー―
研究者情報
研究者名:蓑輪 陽介
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1038/s41567-024-02720-9
【書誌情報】
Yosuke Minowa, Yuki Yasui, Tomo Nakagawa, Sosuke Inui, Makoto Tsubota, Masaaki Ashida (2025). Direct excitation of Kelvin waves on quantized vortices. Nature Physics.