2024-08-22 アメリカ合衆国・パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)
・ PNNL、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校およびマイクロソフトが、新しい触媒材料とエネルギー効率的な触媒プロセスの発見を可能にする、生成 AI と計算機化学を組み合わせたコンピューティングツール、「ChemReasoner」を開発。
・ 大規模言語モデル(LLM) に化学の「言葉」を教え、数十年分の化学の知識を迅速に統合することで、触媒開発に有望な戦略の特定を支援する。プラスチックのアップサイクルから持続可能な航空燃料の生産まで、多くの産業を変革してきた触媒は、通常は試行錯誤によるプロセスを経て開発されている。
・ 現在商用されている LLM は、新しい触媒構造の提案や、反応を好ましい経路に誘導ができるほど化学を理解していない。ChatGPT 等の LLM によるアウトプットは科学百科事典の内容に類似したもので、その論理的判断は次世代の触媒の発見に必要な深みに欠けている。
・ 化学分野での AI の実際の課題は、科学的データによるモデルの訓練が非常に限られていること。最も高収率な方法を用いても他の科学分野に比べて生成されるデータの少ない触媒分野では、このことはさらに大きな課題。
・ このような LLM の化学的な論証能力の不足を補うため、人間によるインプットに基づいたアウトプットを提供する設計(人間のフィードバックによる強化学習:RLFH)の LLM に対し、本研究では「シミュレーションのフィードバックによる学習」システムを開発した。
・ 化学シミュレーションデータで訓練したグラフニューラルネットワーク(GNN)と LLM を組み合わせたChemReasoner では、LLM が新設計を提供し、精度を確保する手段として量子化学シミュレーションによるフィードバックを取得する。
・ シミュレーションで計算された吸着エネルギーを使用し、ユーザーの定義するパラメータに適合する多様な触媒を評価する。ChemReasoner は、触媒クエリにおいて最先端の LLM である GTP-4 の性能よりも優れることがわかった。
・ 今後は同ツールのさらなる性能向上を目指す。同ツールで特定した触媒による CO2 からメタノールへの変換の効率性について検証中。
・ 本研究は、PNNL Laboratory Directed Research and Development program の Generative AI initiativeとマイクロソフトの Accelerate Foundation Models Research initiative、そして Azure Quantum Elements とのパートナーシップにより支援された。
URL: https://www.pnnl.gov/publications/novel-computing-tool-learns-language-chemistry
<NEDO海外技術情報より>
関連情報
PNNL の Chemreasoner(GitHub)
URL: https://github.com/pnnl/chemreasoner