2024-07-30 京都大学
近年、高アスペクト比シリコン加工技術がエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野で注目されています。特に積層型の3次元高集積技術(3D-LSI)の研究が進んでおり、縦方向のシリコン貫通電極作製が必要不可欠な要素技術の一つです。その作製方法として金属アシスト化学エッチング法(MACE:Metal Assisted Chemical Etching)が注目されています。一般的にMACEでは金、銀、白金等の貴金属触媒が用いられますが、シリコン加工後の貴金属触媒の残留が大きな問題となっていました。このため金属残留問題の発生しない炭素系材料触媒が有望視されていますが、触媒性能が十分ではありませんでした。
この度、坂口浩司 エネルギー理工学研究所教授、小島崇寛 同助教、Cheng Yingbo 同博士後期課程学生、信末俊平 同助教、深見一弘 工学研究科准教授の研究チームは、新しい炭素細線製造法を開発し、この手法を用いて従来困難であった酸素ドープ型グラフェンナノリボン(GNR)の合成に成功しました。この新材料は、従来用いられてきた貴金属を凌駕する著しく高いシリコンプロセス触媒性能を発現することを明らかにしました。シリコン半導体加工技術への革新的応用が期待されます。
本研究成果は、2024年7月29日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「置換基の無いGNRの超高真空製造法は確立されていましたが、置換基を導入した機能性GNRの薄膜形成技術は原理的に困難でした。この問題を解決するために電気化学的製造法を開発し、何百サンプルものトライアルを続けて、走査トンネル顕微鏡でGNRの姿を確認できた時の喜びは忘れられません。」(小島崇寛)
詳しい研究内容について
炭素細線を用い貴金属を超える高性能シリコンプロセス触媒を開発―グラフェンナノリボンを微細加工技術に応用へ―
研究者情報
研究者名:坂口 浩司
研究者名:小島 崇寛
研究者名:信末 俊平
研究者名:深見 一弘
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-024-50086-6
【書誌情報】
Hiroshi Sakaguchi, Takahiro Kojima, Yingbo Cheng, Shunpei Nobusue Kazuhiro Fukami (2024). Electrochemical on-surface synthesis of a strong electron-donating graphene nanoribbon catalyst. Nature Communications, 15, 5972.