神経の確率的スパイク発火による秩序生成機能の発見

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神経発火の不規則性・インパルス性が適応的な運動生成能力に寄与

2020-06-01 東京大学

東京大学大学院情報理工学系研究科知能システム情報学研究室の米倉将吾特任研究員と國吉康夫教授らは、神経の確率的なスパイク発火が様々な身体システムにおいて適応的運動の生成を可能とする事を明らかにしました。本成果はProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)誌に掲載されました。

生体のニューロンの多くは数msほどの短いスパイク状の活動電位を生成する事によって情報処理を行います。しかしながら、なぜニューロンがスパイクを生成するのか、ニューロンのスパイクが生体にどのようなメリットをもたらしているのか、今まで十分には理解されていませんでした。

 

研究グループは、筋骨格二脚ロボットを確率的スパイキングニューラルネットワークで制御するシミュレーション実験を行い、スパイクによって筋肉の運動制御を行った方が、なめらかな運動指令を用いて制御するよりも秩序生成能力が高く、様々な環境において適切で秩序立った運動パターンを即座に生成できる能力に優れている事を発見しました。さらに、この秩序生成能力は歩行運動の制御に限らず、スパイキングニューロンによって駆動される多くのシステムにおいて発現しうる事を確認しました。

スパイキングニューロンによる秩序生成能力のイメージ図
確率的なスパイキングニューロンによって二脚筋骨格系の歩行制御を行う事によって、滑りやすい環境や外力がある環境などでの適応能力が向上した。特に、制御指令にある程度の不規則性・インパルス性が含まれている場合に適応能力が最大化される事を発見した。
© 2020 米倉将吾 國吉康夫

今回の成果は、生体機能の多くがスパイクダイナミクスによって支えられている可能性を示唆すると共に、スパイキングニューラルネットワークが多くの制御システム・人工知能システムの適応性を向上させうる事を示唆しています。

「近年の工学分野において、Neuromorphic(生体ニューロンの構造や動作を模倣した大規模集積回路)などでスパイキングニューロンが注目されてはいますが、省電力化などのメリットしか知られておらず、結果、ほとんど全ての人工知能フレームワークは依然として非スパイク型のニューロンモデルを採用しています。スパイキングニューラルネットワークを利用する事によってゆらぎを内包しつつ臨機応変に振る舞える、より生物らしい人工知能を構築できるようになると期待しています」と米倉特任研究員は話します。

この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。

論文情報

Shogo Yonekura and Yasuo Kuniyoshi, “Spike-induced ordering: Stochastic neural spikes provide immediate adaptability to the sensorimotor system,” PNAS (Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America): 2020年5月19日, doi:10.1073/pnas.1819707117.
論文へのリンク (掲載誌)

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