認知機能低下への遺伝因子と後天的危険因子の相互作用を解明

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糖尿病の認知機能低下への影響は APOE 遺伝型により異なる

2020-02-17    国立長寿医療研究センター,メイヨー・クリニック

糖尿病は認知症のリスク因子です。一方、アルツハイマー病の遺伝因子としてAPOE(アポリポ蛋白E)があります。同じ遺伝子でも、遺伝子配列の些細な違い(=遺伝子型)により、性質が大きく変わる場合があります。APOEにはこのような遺伝子型があります。2か所のアミノ酸の違いの組み合わせにより、APOE2、 APOE3およびAPOE4の3つの遺伝子型があり、APOE2の遺伝子型を持つとアルツハイマー病になりにくくなり、APOE4を持つとアルツハイマー病になりやすくなります。すなわちAPOE2 < APOE3 < APOE4の順にアルツハイマー病になりやすくなります。しかし、これまでこのようなAPOEの遺伝子型を踏まえたうえでの糖尿病による認知機能への影響は十分には検討されていませんでした。

図1.APOE遺伝子型別に見た糖尿病による認知機能低下への影響

図1.APOE遺伝子型別に見た糖尿病による認知機能低下への影響

今回、我々、国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター 分子基盤研究部の篠原室長、里部長のグループは、米国メイヨー・クリニックとの共同研究にて、2万人以上を調査した米国 National Alzheimer’s Coordinating Center (NACC)のデータベースを用い「糖尿病の認知機能低下への影響がAPOE遺伝子型で異なること、すなわちAPOE2およびAPOE3を有する人のほうがAPOE4を有する人より、糖尿病による認知機能低下への影響が大きい」ことを示しました(図1)。

さらに剖検脳を用いた解析から、「APOE4を有する人では糖尿病による認知機能低下への影響が少ない」メカニズムとして「APOE4を有する人では糖尿病の有無に関わらず血管病変を生じやすい」ことが示唆されました(図2)。

図2.APOE遺伝子型および糖尿病の血管病変への影響

図2.APOE遺伝子型および糖尿病の血管病変への影響

今後は本結果の検証およびメカニズムの解明を目指し、当センターをはじめとする国内のコホート、レジストリや脳リソースを用い、さらに研究を深めて参ります。

発表論文

Mitsuru Shinohara, Yoshitaka Tashiro, Kaoru Suzuki, Akio Fukumori, Guojun Bu, Naoyuki Sato.
“Interaction between APOE genotype and diabetes in cognitive decline”
Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring, First published: 06 February 2020.

プレスリリース(PDF:494KB)