胎児頻脈性不整脈に対する世界初の多施設共同臨床試験

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約9割の症状が消失 胎内治療を安全に行える体制整備に貢献

2019-08-20 国立成育医療研究センター

 国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)、国立循環器病研究センター、久留米大学病院、三重大学医学部附属病院など15施設のグループは、胎児頻脈性不整脈に対して、多くの施設で協力して臨床試験を行う「多施設共同臨床試験」を世界で初めて行いました。
 胎児頻脈性不整脈とは、胎児の心臓の拍動が正常から外れて速くなる状態を言います。今回の臨床試験では、母親に抗不整脈薬を投与して胎内で治療するプロトコール治療(研究計画に基づいた治療方法)の有効性および安全性を評価しました。その結果、約90%の胎児頻脈性不整脈が消失し、プロトコール治療の高い有効性が確認できました。
 今回の研究成果は、抗不整脈薬を用いた胎内治療の有効性および安全性を示すだけではなく、今後、安全に胎内治療を行っていく体制整備の促進に大きく貢献します。

【プレスリリースのポイント】
・ 世界的にも大規模な多施設共同臨床試験の結果、約90%で胎児頻脈性不整脈が消失し、プロトコール治療の高い有効性が確認されました(図1)。
・ 胎内治療で効果が見られても、新生児期に約30%で頻脈性不整脈が再発しており、出生後2週間は特に注意深い観察が必要と考えられました。
・ 母体の有害事象(治療中に出現した好ましくない症状や検査値の異常)として治療薬剤との関連が否定できないものが高頻度で認められました。しかし、重篤なものはまれで薬剤減量などにより治療の継続が可能でした(表1)。
・ 胎児では、治療薬剤との関連が否定できない有害事象が約25%で確認されました。胎児死亡例(2例)および早期娩出となった症例(2例)が含まれていたことから、産科、小児循環器科、新生児科の共同による慎重な管理および迅速な対応が必要と考えられます。(表1)

【背景・目的】
・胎児頻脈性不整脈は2万分娩に1人とまれな疾患ですが、持続した場合には胎児水腫(胸やおなかに水がたまったり、全身がむくんだりすること)へ進行して、予後不良となる恐れがあります。
・そのため、母体に抗不整脈薬を投与する胎内治療が以前より試みられており、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドなどの抗不整脈薬を用いた報告が多数なされてきました。しかし、そのほとんどが後方視的研究(過去の治療結果を振り返って調査する方法で信頼性がやや低い研究)であることから、最適なプロトコールは確立しておらず、有害事象についても十分な検証がなされていませんでした。
・そこで、本研究では、胎児頻脈性不整脈に対するプロトコール治療の有効性および安全性を確認する前向き介入試験(あらかじめ立てられた計画に基づいて治療することで高い信頼性を持つ研究)を世界で初めて15施設共同で行いました。

図1 プロトコール治療の有効性(奏効率)
※同意撤回があった1例を除く49例で解析


表1 プロトコール治療の安全性(治療薬剤との関連が否定できない有害事象)

【今後の展望・コメント】
・胎児治療の 1つの方法として、母体への抗不整脈薬を用いた胎内治療の有効性および安全性が初めて示されました。
・今回の研究成果は、日本胎児心臓病学会のガイドラインにも掲載される予定であり、将来的に国内外で実施される臨床試験において比較対象となる重要なデータと考えられます。
・今回の研究成果によって、胎児頻脈性不整脈に対する胎内治療が安全に行える体制の整備が進むことが期待されます。

<発表論文情報>
著者:三好剛一、前野泰樹、濵崎俊光、稲村 昇、安河内 聰、川滝元良、堀米仁志、与田仁志、竹田津未生、新居正基、萩原聡子、賀藤 均、清水 渉、白石 公、坂口平馬、上田恵子、桂木真司、山本晴子、左合治彦、池田智明(日本胎児不整脈班)
題名:Antenatal Therapy for Fetal Supraventricular Tachyarrhythmias: Multicenter Trial
掲載誌:Journal of the American College of Cardiology

<共同研究施設名(先進医療 B実施施設として承認された15施設)>
国立循環器病研究センター、久留米大学、大阪母子医療センター、国立成育医療研究センター、神奈川県立こども医療センター、筑波大学、三重大学、東邦大学医療センター大森病院、北海道大学、兵庫県立こども病院、長野県立こども病院、静岡県立こども病院、神戸市立医療センター中央市民病院、岡山医療センター、大阪大学

<謝辞>
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(事業名:臨床研究・治験推進研究事業、研究開発課題名:胎児不整脈に対する胎児治療の臨床研究)より資金的支援を受け、先進医療 Bとして実施されました。

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