小麦に対するアレルギーへのなりやすさ・なりにくさに関わる遺伝子を特定

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2019-07-25   筑波大学,藤田学園 藤田医科大学,日本医療研究開発機構

研究成果のポイント
  1. 加水分解コムギ注1)による経皮感作小麦アレルギー患者のゲノム解析を行い、病気のなりやすさ、なりにくさに関わる遺伝子がHLA-DQ領域とRBFOX1領域に存在することを見出しました。
  2. 本研究成果は化粧品関連の副反応、ならびに小麦アレルギーに全ゲノム関連解析を応用した初めての成果となるものです。
概要

国立大学法人筑波大学医学医療系の野口恵美子教授、藤田医科大学の松永佳世子教授、矢上晶子教授、理化学研究所の秋山雅人リサーチアソシエイト(研究当時)、玉利真由美チームリーダー(研究当時)、国立成育医療研究センター研究所の斎藤博久所長補佐らの国内多施設共同研究によるグループは、

国立大学法人 筑波大学
学校法人藤田学園 藤田医科大学
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

研究成果のポイント

  1. 加水分解コムギ注1)による経皮感作小麦アレルギー患者のゲノム解析を行い、病気のなりやすさ、なりにくさに関わる遺伝子がHLA-DQ領域とRBFOX1領域に存在することを見出しました。
  2. 本研究成果は化粧品関連の副反応、ならびに小麦アレルギーに全ゲノム関連解析を応用した初めての成果となるものです。

概要

国立大学法人筑波大学医学医療系の野口恵美子教授、藤田医科大学の松永佳世子教授、矢上晶子教授、理化学研究所の秋山雅人リサーチアソシエイト(研究当時)、玉利真由美チームリーダー(研究当時)、国立成育医療研究センター研究所の斎藤博久所長補佐らの国内多施設共同研究によるグループは、経皮感作小麦アレルギーと関連する遺伝要素の解明を試み、その同定に成功しました。

小麦は化粧品などの直接肌に触れる成分にも含まれ、皮膚から入ってアレルギーを起こす症例があることが知られています。本研究では、経皮感作小麦アレルギー患者の全ゲノム関連解析を行い、病気のなりやすさ、なりにくさに関わる遺伝子がHLA-DQ領域とRBFOX1領域に存在することを見出し、発症に関連するHLA-DQアレル型を同定しました。小麦アレルギーに対して全ゲノム関連解析を応用した研究としては、初めての成果です。

この研究成果は、2019年7月10日付で、国際科学誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」にオンライン公開されました。

*本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の免疫アレルギー疾患実用化研究事業「経皮感作による重篤な小麦アレルギーの病態解明ならびに予防法の確立」(研究開発代表者:松永佳世子)ならびにバイオバンクジャパンプロジェクト、文部科学省新学術領域研究「ネオ・セルフの生成・機能・構造」の公募研究「HLA型に基づく経皮感作小麦アレルギー関連ペプチドの同定」(研究代表者:野口恵美子)による支援を受けて行われました。

研究の背景

アレルギー疾患は、今では国民の約2人に1人がかかる、いわゆる「国民病」です。アレルギー疾患は、多因子疾患といって遺伝(体質)と環境の両方が関わって発症します。アトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア障害がある場合には、食物アレルギーの発症リスクが高まることが知られており、皮膚からアレルギー物質(アレルゲン)が入る「経皮感作」のメカニズムが注目されています。小麦はパンやうどんなど毎日の食生活で口から摂取する食べ物ですが、化粧品などの直接肌にふれる成分にも加水分解コムギとして含まれています※1。日本国内で、加水分解コムギを含む石鹸を使用したあとに、パン、パスタ、うどんなどの小麦含有食品を食べて蕁麻疹や呼吸困難の症状を起こす症例が2009年に初めて報告されました。日本アレルギー学会では、2011年7月に「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会(松永佳世子委員長)」を設置し、診断基準の策定、検査法の構築とともに、全国規模で症例集積を行いました。その結果、計2,000名以上の加水分解コムギによる経皮感作小麦アレルギーの症例が報告され[1]、社会問題となりました。このような大規模な経皮感作アレルギー患者は世界的に見ても過去に報告がありません。本研究では、この経皮感作小麦アレルギーと関連する遺伝要因の解明のための研究を行いました※2。

研究内容と成果

全国のアレルギー疾患を診療する医師の協力のもと、525例の経皮感作小麦アレルギー患者と日本人一般集団3244名から得られた遺伝子型情報を使用して、全ゲノム関連解析注2)と確認のための追認解析を行いました。その結果、6番染色体のHLA-DQ領域と16番染色体のRBFOX1領域に、関連を示す領域を同定しました(下図)。HLAは免疫応答の鍵となる遺伝子で、極めて多くの種類があり、個人差があります。アレルゲンが体の中に入ってきたときに、抗原提示細胞等によりペプチド(アミノ酸が2つ以上つながっているもの)に分解され、HLAとともにT細胞に提示され、免疫反応が活性化されます。個人が持つHLA型により結合できるペプチドが異なるため、個人が有するHLA型の違いが経皮感作小麦アレルギーへのなりやすさ、なりにくさに関係していると考えられます。


図 本研究のフローチャート
経皮感作小麦アレルギーの全ゲノム関連解析によりHLA-DQ領域とRBFOX1領域に関連を示す領域を同定し、HLA領域についてはなりやすいHLA型としてHLA*DQB1*03:02とDQB1*03:03、なりにくいHLA型としてHLA*DQB1*06:01とDQB1*03:01をそれぞれ同定しました。

今後の展開

本研究成果と他の食物によるアレルギーの患者や、経皮感作ではない従来型の小麦アレルギーの患者との比較を行うことにより、食物アレルギーの発症機序の解明や、より良い治療法、発症予測法の開発が期待されます。

用語解説

注1)加水分解コムギ
主に小麦に含まれるグルテンに酸、アルカリ、熱、酵素などを使って処理をすることにより細かくしたものです。化粧品や食品添加物などに使用されています。
注2)全ゲノム関連解析
ゲノム全体を網羅的にカバーする数十万個の遺伝子多型を使用して、どの遺伝子型が疾患や形質と関連しているのかを調べる方法です。

参考

※1
加水分解コムギタンパク質を化粧品等に安全に使用するための基準として、我が国では「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」及び関連する研究により、医薬部外品原料規格2006を一部改正し、新たに分子量分布を定めました(平成29年3月 30日薬生発0330第2号)。また、米国のThe Cosmetic Ingredient Review (CIR) Expert Panel[2]およびEUのThe Scientific Committee on Consumer Safety (SCCS)[3]は平均分子量を定めています。
※2
2019年1月末日現在における確実例2111例の予後アンケート調査では、石鹸の使用中止と治療によって、79%以上の患者さんが小麦含有食品を食べられるようになっています(受診を自己中断した症例は除きます)(中村ら、2018年度(旧)茶のしずく石鹸による即時型コムギアレルギーの予後調査結果、第68回日本アレルギー学会学術大会、2019年6月14日­‑16日)。

参考文献

[1]
Yagami A, Aihara M, Ikezawa Z, Hide M, Kishikawa R, Morita E, et al. Outbreak of immediate-type hydrolyzed wheat protein allergy due to a facial soap in Japan. J Allergy Clin Immunol 2017; 140:879-81 e7.
[2]
Burnett C, Bergfeld WF, Belsito DV, Hill RA, Klaassen CD, Liebler DC, et al. Safety Assessment of Hydrolyzed Wheat Protein and Hydrolyzed Wheat Gluten as Used in Cosmetics. Int J Toxicol 2018; 37:55S-66S
[3]
COMMISSION REGULATION (EU) 2017/2228: PDF

掲載論文

題名
HLA-DQ and RBFOX1 as susceptibility genes for an outbreak of hydrolyzed wheat allergy
(加水分解コムギアレルギーの疾患感受性遺伝子としてのHLA-DQとRBFOX1)
著者名
Emiko Noguchi, Masato Akiyama, Akiko Yagami, Tomomitsu Hirota, Yukinori Okada, Zenichiro Kato, Reiko Kishikawa, Yuma Fukutomi, Michihiro Hide, Eishin Morita, Michiko Aihara, Makiko Hiragun, Yuko Chinuki, Takahiro Okabe, Akiko Ito, Atsuko Adachi, Atsushi Fukunaga, Yumiko Kubota, Toshiyuki Aoki, Youko Aoki, Kazue Nishioka, Tetsuya Adachi, Nobuo Kanazawa, Hitoshi Miyazawa, Hiroyuki Sakai, Takehito Kozuka, Hideo Kitamura, Hideo Hashizume, Chiharu Kanegane, Koji Masuda, Kumiya Sugiyama, Reiko Tokuda, Junichi Furuta, Ikkou Higashimoto, Atsuko Kato, Mariko Seishima, Akihiko Tajiri, Atsuko Tomura, Hiroko Taniguchi, Hiroto Kojima, Hidenori Tanaka, Aiko Sakai, Wataru Morii, Masashi Nakamura, Yoichiro Kamatani, Atsushi Takahashi, Michiaki Kuboa, Mayumi Tamari, Hirohisa Saito, Kayoko Matsunaga
掲載誌
Journal of Allergy and Clinical Immunology
DOI
10.1016/j.jaci.2019.06.034

謝辞

本研究に協力頂きました患者様のご厚意に深謝いたします。本研究は、ご協力いただいた全国の患者様と臨床医の先生方、共同研究者、研究支援機構、日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」のご協力により達成することができました。研究グループ一同、深く感謝申し上げます。

お問い合わせ先

研究内容に関すること

野口 恵美子(のぐち えみこ)
筑波大学 医学医療系 教授

松永 佳世子(まつなが かよこ)
藤田医科大学医学部アレルギー疾患対策医療学 教授

報道に関すること

筑波大学広報室

学校法人藤田学園 法人本部 広報部 学園広報課

事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部 難病研究課 免疫アレルギー疾患実用化研究事業

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