作業記憶(ワーキングメモリ)の脳メカニズムを解明

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作業記憶に必要な海馬細胞の神経発火列

東京大学大学院薬学系研究科の佐々木拓哉助教らの研究グループは、ラットに多数の選択肢があるような迷路課題を解かせ、課題を効率的に解くために必要な作業記憶(ワーキングメモリ)が、海馬の神経活動によって形成されていることを解明しました。

私たちは、現在の作業に必要な情報を一時的に記憶し、その記憶に基づいて一連の作業を効率的に実行することができます。これまで、適切な作業記憶を保持するために、海馬やその近傍の歯状回といった脳領域が、どのような役割を果たすかは解明されていませんでした。

本研究グループは、ラットの脳に多数の電極を埋め込み、報酬を得るために迷路課題を解くラットから脳活動を記録しました。解析の結果、海馬-歯状回の相互作用から生じる神経細細群の活動が、適切な作業記憶に重要であることを示しました。特筆すべきは、保持する必要がある作業記憶に対応する神経活動は強く保たれており、逆に、不要な記憶に対しては、神経活動が低下するという点です。つまり、海馬の神経回路には、保持すべき記憶に対応した神経細胞が存在し、これらの細胞が必要に応じて、活動レベルを柔軟に変化させることがわかりました。

本研究により、作業記憶における海馬の役割、そしてその神経メカニズムの一端が解明されました。本研究成果は、記憶すべき項目が次々と変化していくような環境において、適切かつ効率的に作業を進めるための脳メカニズムの解明に向けた布石となります。

「通常、神経生理学の研究では実験パートが大きな比重を占めます。しかし、今回の研究はデータ解析に要した時間のほうが圧倒的に多く、3年以上を要しました」と佐々木助教は話します。「今後は、今回の研究のように、多変量データから数理解析によって重要な情報を抽出する研究戦略がますます増えていくだろう」と続けます。

作業記憶が必要な迷路課題における海馬の神経活動

作業記憶が必要な迷路課題における海馬の神経活動
ラットの脳に電極を埋め込み、短期間保持される作業記憶(ワーキングメモリ)を参照して、報酬位置を効率的に訪れる迷路課題を解かせます。迷路の概略図で各数字は8つのアームの番号を表します。ラットは毎回中央に置かれ、アームの端にある報酬を効率よく獲得します。
© 2019 佐々木拓哉

論文情報

Takuya Sasaki, Veronica C Piatti, Hwaun Ernie, Siavash Ahmadi, Stefan Leutgeb, Jill K Leutgeb, “Dentate network activity is necessary for spatial working memory by supporting CA3 sharp-wave ripple generation and prospective firing of CA3 neurons.,” Nature Neuroscience: 2018年1月16日, doi:10.1038/s41593-017-0061-5.
論文へのリンク (掲載誌)

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