ティラノサウルス科の化石から歯の生えかわりの規則性を解明

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未熟な個体の解析がもたらす成長についての新知見

2019-02-15  東京大学

哺乳類以外の脊椎動物では、生涯にわたってくりかえし歯が生えかわります。東京大学大学院理学系研究科の花井智也大学院生(博士課程3年)と對比地孝亘准教授はティラノサウルス科の子どもの化石を解析し、歯の生えかわり(交換)の規則性が大人のものと異なる可能性を示しました。

ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)に代表されるティラノサウルス科は、中生代白亜紀後期(1億~6600万年前)に大繁栄した肉食性のグループです。これまで研究者たちはこのグループの恐竜がどのように物を食べていたのかという点に関心を寄せてきました。歯や骨の解析から、上顎の前歯(前上顎骨歯)と他の歯を使い分けていたことや、子どもと大人では獲物が異なっていた可能性が指摘されています。しかしながら、ティラノサウルス科における歯の交換の規則性については詳しく分かっていませんでした。物を噛むたびに歯はすり減ったり欠けたりするため、歯の交換には重要な意味があります。歯の交換に関する知見が充実すれば、このグループにおける歯列の形態と機能の理解に近づきます。

2011年、對比地准教授はティラノサウルス科の一種であるタルボサウルス(Tarbosaurus bataar)の子どもの化石を報告しました。今回、花井大学院生と對比地准教授は骨の内部に隠れた未熟な歯を観察するため、この化石の頭蓋骨をX線CTスキャンと三次元解析ソフトウェアによって詳しく調べました。下顎の歯列では、前から数えて奇数番目の歯槽(歯がはまっている穴)と偶数番目の歯槽で交互に交換がおきていました。ティラノサウルス科の大人ではこの特徴に加えて、先に奥歯から抜けはじめることが知られていました。しかし、子どもの下顎歯列にはそのような特徴は無く、単純な交互交換をしていたようです。したがって、ティラノサウルス科では歯の交換の規則性が成長とともに変化した可能性があります。似た現象は現生ワニ類でも知られています。一方、上顎の歯列では、前歯(前上顎骨歯)と他の歯(上顎骨歯)の間で交互交換の規則性が乱れていました。このような特徴は他の爬虫類で知られていましたが、ティラノサウルス科で確認されたのは初めてです。前歯だけが他の歯とは異なるペースで交換されていた可能性が高いです。前歯の交換が他の歯とは別に起こることを背景に、ティラノサウルス科では前歯と他の歯が異なる形態・機能をもつようになったのかもしれません。今回得られた知見は、ティラノサウルス科の食性に関する今後の研究において重要なヒントになると予想されます。

「これほど状態のよい子どもの化石は大変珍しいです。貴重な化石を研究する機会に恵まれたので、とてもワクワクしました」と花井大学院生は話します。「成長にともなう食性の変化についての議論に貢献できるのでは」と期待を寄せます。


タルボサウルスの子どもの歯列
未熟な歯を黄色と赤色、成熟した歯を青色で示した。A:コンピューター上で半透明化させた頭蓋骨の左側面図。左上顎の歯列が可視化されている。B:左上顎の歯列を裏側から見た図。C:子どもと大人で下顎の歯列を比較した図。大人では奥歯から先に交換が始まる。
© 2019 Tomoya Hanai.

論文情報

Tomoya Hanai, Takanobu Tsuihiji, “Description of Tooth Ontogeny and Replacement Patterns in a Juvenile Tarbosaurus bataar (Dinosauria: Theropoda) Using CT-Scan Data,” The Anatomical Record: 2018年10月31日, doi:10.1002/ar.24014.
論文へのリンク (掲載誌)

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