古くから知られる西日本の流水性サンショウウオから2新種を発見

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ブチサンショウウオには実は3種が含まれていた

2019-02-04 京都大学

西川完途 地球環境学堂准教授(兼・人間・環境学研究科准教授)、松井正文 名誉教授、富永篤 琉球大学准教授の研究グループは、遺伝子解析・形態解析の結果、西日本を代表するサンショウウオであるブチサンショウウオ(Hynobius naevius)の中に、実は3種のサンショウウオが含まれていることを明らかにしました。そして、中国地方の集団を、チュウゴクブチサンショウウオ(Hynobius sematonotos)、九州北東部の集団をチクシブチサンショウウオ(Hynobius oyamai)として新種記載(命名)しました。

本研究により、1838年に記載され古くから知られている日本の代表的なサンショウウオの中に実は3種が含まれ、日本の両生類の多様性が予想以上に高いことが明らかになりました。

世界のサンショウウオ属のうち、半数以上の種が日本に固有種として分布しており、この仲間の多様性の把握は日本の動物相の形成史を理解する上で重要な知見となります。また今回の分割にともなって各種の分布域は狭くなり、その分、各種の絶滅リスクも高くなります。つまり、本研究成果は、各種の保護対策の再検討の必要性があることも示唆しています。

本研究成果は、2019年1月29日に、国際学術誌「Zootaxa」のオンライン版に掲載されました。

図:(A)ブチサンショウウオ(Hynobius naevius)、(B)チュウゴクブチサンショウウオ(Hynobius sematonotos)、(C)チクシブチサンショウウオ(Hynobius oyamai)

書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.11646/zootaxa.4550.4.3

ATSUSHI TOMINAGA, MASAFUMI MATSUI, KANTO NISHIKAWA (2019). Two new species of lotic breeding salamanders (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) from western Japan. Zootaxa, 4550(4), 525-544.

詳しい研究内容について

古くから知られる西日本の流水性サンショウウオから 2 新種を発見
―ブチサンショウウオには実は 3 種が含まれていた―
京都大学大学院地球環境学堂 西川完途 准教授(兼:同大学院人間・環境学研究科 准教 授)、松井正文 同名誉教授と琉球大学教育学部 富永篤 准教授らの研究グループは、遺伝子 解析・形態解析の結果、西日本を代表するサンショウウオであるブチサンショウウオ Hynobius naevius の中に実は 3 種のサンショウウオが含まれていることを明らかにしまし た。そして、中国地方の集団をチュウゴクブチサンショウウオ Hynobius sematonotos、九 州北東部の集団をチクシブチサンショウウオ Hynobius oyamai として新種記載(命名)し ました。
本研究により、1838 年に記載され古くから知られている日本の代表的なサンショウウオ の中に実は 3 種が含まれ、日本の両生類の多様性が予想以上に高いことが明らかになりま した。
世界のサンショウウオ属のうち、半数以上の種が日本に固有種として分布しており、この 仲間の多様性の把握は日本の動物相の形成史を理解する上で重要な知見となります。また 今回の分割にともなって各種の分布域は狭くなり、その分、各種の絶滅リスクも高くなりま す。したがって、今回の結果は各種の保護対策の再検討の必要性があることも示唆していま す。
本研究成果は、2019 年 1 月 29 日に国際学術誌「Zootaxa」にオンライン掲載されまし た。

<発表概要>
江戸時代に記載されたブチサンショウウオ:島国である日本にはオオサンショウウオに 代表されるような固有の両生類が多数見られます。西日本を代表するサンショウウオであ るブチサンショウウオ Hynobius naevius もその一つで、江戸時代にシーボルトによりヨー ロッパに持ち帰られた標本に基づき、1838 年記載されたもっともよく知られた日本固有の サンショウウオです。これまで世界では 41 種のサンショウウオ属の種が知られていました が、そのうち 24 種は日本の固有種で、この仲間の多様性の中心は日本にあります。このサ ンショウウオ類は近縁種間でも形態的な類似性が高く、従来の形態学的な比較のみでは多 様性の実態把握が困難でした。

新種の発見の経緯: 琉球大学教育学部の富永篤准教授、京都大学の松井正文名誉教授、同 西川完途准教授は、今回の研究で中国地方から九州北部の広域に分布するブチサンショウ ウオを遺伝学的手法、形態学的 手法により比較した結果、これ までブチサンショウウオとされ てきた種には、遺伝的には異質 な 3 つの集団が含まれており、 これら 3 集団は系統的にはそれ ぞれ別の種類のサンショウウオ に近いことを明らかにしました (図 1)。形態学的な比較の結果、 これら 3 集団は互いによく似て いるものの、形態的にも違いが みられることから、広義のブチ サンショウウオ Hynobius naevius は三種に分けられるこ とが明らかとなりました。

3 種の違い: 真のブチサンショウウオ Hynobius naevius は、長崎県、佐賀県などの集団 であることが先行研究から明らかなことから、それ以外の中国地方の集団をチュウゴクブ チサンショウウオ Hynobius sematonotos、九州北東部の集団をチクシブチサンショウウ オ Hynobius oyamai として新種記載しました。ブチサンショウウオは、青紫色の体色で背 中に斑紋がみられず、体が大きく(図 2)、鋤骨歯数が多く、相対的な鼻孔間の距離が小さ く、相対的に後肢が短く、鋤骨歯列が深いのに対し(図3)、チュウゴクブチサンショウウ オは赤紫色に近い体色であることが多く灰褐色の斑紋を背中に持ち、体が小さく、鋤骨歯列 が少なく、相対的な鼻孔間の距離が大きく、相対的に後肢が長く、鋤骨歯列が浅いのが特徴 3 で、またチクシブチサンショウウオは、大きさと体 色はブチサンショウウオに類似しているが、時とし て銀白色の斑紋を背中に持ち、相対的な鼻孔間の距 離が大きく、相対的に後肢が長く、鋤骨歯列は前二 者の中間的な深さであることが特徴です。


新種発見の重要性:
1838 年に記載され、古くか ら知られている日本の代表的なサンショウウオの 中に実は 3 種が含まれていたという事実は、これま で考えられていた以上に、日本の両生類相の多様性 が高く、独自性も高いことを示唆します。日本固有 のサンショウウオ類の多様性の実態解明は、日本 の動物相の多様性の形成史を理解するうえで、重 要な知見となると考えられます。一方で、ブチサン ショウウオからは 2008 年にも現在のコガタブチ サンショウウオ Hynobius stejnegeri が再確認さ れたことに伴い分割されており、今回の新種記載 による分割で、個々の種の分布はさらに狭い範囲 となりました。各種の分布が狭いということは、そ れぞれの種の絶滅リスクも高い事を意味し、今回 の結果は各種の分布域で保護対策に関する再検討 がなされるべきことを示唆します。

<用語解説>
鋤骨: 頭蓋骨を構成する皮骨性由来の骨で、一次口蓋を構成する最前部の骨。サンショウウ オ類では、この骨に鋤骨歯列を有し、この歯列が種ごとに異なる特徴を持つことが多 く、識別形質の一つとして利用される。
ブートストラップ値: 系統樹において、それぞれの枝の分岐が形成する単系統群の確からし さを示す統計量。0-100 の値で示し、100 に近いほど確からしい。

<論文情報>
(1) 論 文 タイトル : Two new species of lotic breeding salamanders (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) from western Japan (日本語訳 : 西日本の流水産卵性サンショウウオ (両生綱,有尾目,サンショウ ウオ科)の二新種)
(2) 雑誌名:Zootaxa 4
(3) 著者:Atsushi Tominaga*, Masafumi Matsui, & Kanto Nishikawa 富永篤 (琉球大学 教育学部 准教授) ・松井正文 (京都大学 大学院人間 ・環境学 研究科 名誉教授)・西川完途(京都大学大学院 地球環境学堂(併任:人間・環境 学研究科) 准教授) (4) DOI 番号:https://doi.org/10.11646/zootaxa.4550.4.3
(5) アブストラクト URL: https://www.mapress.com/j/zt/article/view/zootaxa.4550.4.3
(6) 注意事項:論文公開日時 平成31年1月29日午前中(日本時間)

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