インフラの長寿命化を支える先進レーザー診断技術の実証実験に成功

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2018/12/19 理化学研究所,レーザー技術総合研究所

理化学研究所(理研)光量子工学研究センターの緑川克美センター長と加瀬 究先任研究員、レーザー技術総合研究所(レーザー総研)の島田義則主任研究員と倉橋慎理研究員らの共同研究グループは、トンネルなどのインフラの保守保全作業を自動化、効率化する先進レーザー診断技術「車両走行型高精細レーザー表面計測(レーザー走行計測)[1]」、「レーザー誘起振動波診断技術(レーザー打音)[2]」を開発しました。そして、静岡県交通基盤部協力のもと、2018年12月18日、静岡県富士宮市の尾崎トンネルにおいて、トンネル壁面の同一ひび割れ箇所へのレーザー走行計測およびレーザー打音の連結実験に初めて成功しました。

本研究成果および実験結果は、効率的かつ安全なインフラの保守保全法の確立に向けた大きな前進と言えます。

高度経済成長期に建設されたトンネルなどのインフラは老朽化し、修繕が必要な箇所が増えてきています。しかし、現在、トンネルなどのインフラの保守保全作業は、訓練を受けた技術者の目視確認[3]、手作業(触診・打音・叩き落とし[3])に委ねられており、効率的で安全なインフラの保守保全法の確立が求められています。

そこで共同研究グループは、レーザー技術を基盤とした、技術者がトンネルの内壁に近づかなくてよい、遠隔的かつ効率的な計測法をこれまでに開発しました注1)

今回の実験は、同トンネルを片側通行止めの中で行われました。レーザー走行計測は、理研が開発したTDI(Time Delay Integration)方式を採用しています。暗いトンネル内でも帯状のレーザー光を投影し、走行しながら反射光を蓄積していく特殊なセンサーを開発し、時速30km以上の速度でも分解能200μm(マイクロメートル、1μmは1,000分の1mm)で全長192mのトンネル壁面を連続取得できます。

また、レーザーを用いて打音検査を行う「レーザー打音[2]」は、西日本旅客鉄道株式会社およびレーザー総研らが先行して研究開発しています。そして、レーザー総研らは、レーザー干渉計測法等の開発により、従来の手作業の打音検査と比較して20倍の速度で検査可能な装置の開発に成功しました。今回の実験では、レーザー総研らが開発した1秒海に50回の打音検査が可能な装置を中型4tトラックに搭載し、理研が事前に表面計測したひび割れ箇所に対してSTOP & GOでレーザー打音検査を行いました。

これらの技術はそれぞれ、現在インフラの保守保全作業で行われている目視確認と手作業による触診、打音検査、叩き落としに相当する方法です。そして、理研ベンチャー[4]の株式会社フォトンラボ(代表取締役社長:木暮繁)が中心となり、保守保全作業を遠隔、非接触かつ高速に行う社会実装を進めております。

注1)2016年12月2日プレスリリース「インフラの長寿命化を支える先進レーザー診断技術の開発

車両走行型高精細レーザー表面計測の様子の写真

車両走行型高精細レーザー表面計測(レーザー走行計測)の様子

レーザー誘起振動波診断技術のイメージ図の写真

レーザー誘起振動波診断技術(レーザー打音)のイメージ図

※研究支援

本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術(藤野陽三プログラムディレクター)」(管理法人:科学技術振興機構)の支援を受けて行われました。

実証実験について

日時:2018年12月18日(火)14:00-15:00
場所:県道塩出尾崎線 尾崎トンネル(静岡県富士宮市内房)
尾崎トンネル概要:延長192m、幅員9.8m(車道部6.5m)、片道1車線、1993年竣工
内容:

  1. レーザー走行計測による実験
  2. レーザー打音による実験
補足説明
  1. 車両走行型高精細レーザー表面計測(レーザー走行計測)
    走行する車両からレーザー光を用いてトンネル壁面をイメージングする技術。デジタルカメラを用いる従来方式では0.2mm以下の高い分解能を実現することが原理的に困難である。従来方式の500倍の光信号を得ることのできるTDI(Time Delay Integration)計測を車載計測システムにおいて初めて実現し、屋外で使用できるレベルの安全基準を満たすレーザー光を用いながらも高分解能、高SN比の計測データを得ることに成功した。
  2. レーザー誘起振動波診断技術(レーザー打音)
    打音検査おける「打撃」と「耳で聞く」を共にレーザーで行う、遠隔・非接触による打音検査の一種である診断技術。振動励起レーザー照射によりコンクリート表面に光音響波を発生させ、その振動を別のレーザーを用いたレーザー計測システムにより計測を行う。
  3. 目視確認、触診・打音・叩き落とし
    コンクリートの経年変化に伴い発生したひび割れ同士が重なること(閉合)により、コンクリートが剥離する恐れが発生する。目視確認では、肉眼により表面状態を把握する。特にひび割れについては、その位置、長さ、幅等を計測・記録する。触診検査では、技術者が直接手で触れることで表面形状の変状から内部の状態を把握する。打音検査では、表面をハンマーで叩き、発生する音の違いにより、内部のうき、剥離状態を特定する。検査の結果、剥離の恐れがあると判断されたコンクリート欠陥部分はハンマー等を用いて叩き落としている。
  4. 理研ベンチャー
    理研の研究成果を中核技術として起業し、一定の要件を満たすことで理研から認定を受けた企業。理研ベンチャーでは、最先端で活躍する理研の研究者が自然科学における研究テーマを追求する過程で考案した「新しい知見や技術」を日常の暮らしや産業技術に役立てることを目指し、研究成果の迅速な実用化と普及に取り組んでいる。
問い合わせ先

理化学研究所 光量子工学研究センター
センター長 緑川 克美(みどりかわ かつみ)
光量子制御技術開発チーム
先任研究員 加瀬 究(かせ きわむ)

レーザー技術総合研究所 レーザー計測研究チーム
主任研究員 島田 義則(しまだ よしのり)

機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当
レーザー技術総合研究所 総務部 報道担当

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