アトピー性皮膚炎と乾癬の新概念「上皮-免疫微小環境 (EIME)」を提唱

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厚さ0.2 mmの微小環境が皮膚炎を長びかせる

2018/11/28 京都大学

大日輝記 医学研究科講師、椛島健治 同教授らの研究グループは、「上皮-免疫微小環境 (EIME)」という新しい概念を提唱しました。どのような皮膚炎になりやすいかは、以前は免疫細胞の性質で決まると考えられていました。一方で、皮膚の表面の角質バリアの性質や善玉菌と悪玉菌の構成、また皮膚の感覚神経の働きが大きく影響することが次第に明らかにされてきました。

本研究グループは、これらの関係をまとめることで、さまざまなタイプの慢性の皮膚炎が起こる仕組みを、次のように説明づけることができると考えました。

  • 皮膚には、毒物やカビなど、体外のさまざまな有害な因子を感知して、それぞれを追い出すのに最適な反応を引き起こす仕組みがあり、この仕組みは主に体表面から0.2 mmほどの微小環境が担っている。
  • この仕組みに偏りが起こると、皮膚表面の上皮細胞と免疫細胞の相互作用で炎症のループが回り始め、悪玉菌の影響や感覚神経の働きも結果的にこのループを通ることで炎症に影響を与える。
  • この仕組みを明らかにすることで、新しい治療につながる可能性がある。

本研究成果は、2018年11月16日に、国際学術誌「Nature Immunology」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概念図

書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41590-018-0256-2

Teruki Dainichi, Akihiko Kitoh, Atsushi Otsuka, Saeko Nakajima, Takashi Nomura, Daniel H. Kaplan & Kenji Kabashima (2018). The epithelial immune microenvironment (EIME) in atopic dermatitis and psoriasis. Nature Immunology, 19(12), 1286-1298.

詳しい研究内容について

アトピー性皮膚炎と乾癬の新概念「上皮-免疫微小環境 (EIME)」を提唱
―厚さ 0.2 mm の微小環境が皮膚炎を長びかせる― 概要
なぜ、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚のトラブルが長びく人とそうでない人がいるのでしょうか。
京都大学大学院医学研究科皮膚科学 大日輝記 講師、椛島健治 同教授らの研究チームは、「上皮-免疫微小 環境 (EIME)」という新しい概念を提唱しました。どのような皮膚炎になりやすいかは、以前は免疫細胞の性 質で決まると考えられていました。いっぽうで、皮膚の表面の角質バリアの性質や善玉菌と悪玉菌の構成、ま た皮膚の感覚神経のはたらきが大きく影響することがしだいに明らかにされてきました。本研究チームは、こ れらの関係をまとめることで、さまざまなタイプの慢性の皮膚炎がおこるしくみを、次のように説明づけるこ とができると考えました。
① 皮膚には、毒物やカビなど、体外のさまざまな有害な因子を感知して、それぞれを追い出すのに最適の反 応をひきおこすしくみがあり、このしくみは主に体表面から 0.2 mm ほどの微小環境がになっている。
② このしくみにかたよりがおこると、皮膚表面の上皮細胞と免疫細胞の相互作用で炎症のループが回り始 め、悪玉菌の影響や感覚神経のはたらきも結果的にこのループを通ることで炎症に影響をあたえる。
③ このしくみを明らかにすることで、あたらしい治療につながる可能性がある。 この学説は、2018 年 11 月 16 日に国際学術誌「Nature Immunology」にオンライン掲載されました。

1.背景
皮膚におこる炎症にはさまざまなタイプがあります。ある人はアトピー性皮膚炎をおこしやすかったり、ま たある人は乾癬という疾患の症状をおこしやすかったりします。この性質は人種や遺伝的な素因だけではなく、 年齢やからだの部位によっても異なることが知られています。
皮膚炎をおこしやすいかどうか、またどのような皮膚炎をおこしやすいかは、炎症にかかわる免疫細胞の性 質で決まると考えられてきました。いっぽうで、皮膚の表面で角質がつくるバリアの性質や、皮膚の表面にい るさまざまな善玉菌や悪玉菌の組み合わせ、また皮膚の感覚神経が、炎症のおこしやすさやその性質に大きな 影響をあたえることがしだいに明らかにされてきました。しかしながら、これらの要因と炎症とのかかわりの 大部分は個別に研究が進められていて、かならずしも全体像を説明しようとするものではありませんでした。

2.概念の構成

さまざまな病気のもととなる 「炎症」は本来、あらゆる有害な因子による悪影響からわたしたちのからだを 守り、こわされた部分をなおすためのはたらきです。わたしたちのからだの内と外とは 「上皮」とよばれる組 織でへだてられています。上皮は、細菌やウイルスだけではなく、ダニや毒物、寄生虫、カビなど、体の外か ら侵入する有害因子を感知して、それぞれを追い出すために最適の反応をひきおこせることが分かっています。
本研究チームは、皮膚を場とする免疫のはたらきが、上皮の微小環境とのかかわりによって影響をうけるこ とで、さまざまな炎症性の病気がおこったり長びいたりするのではないかと考えました。そして、これまでの 知見をまとめることで、アトピー性皮膚炎と乾癬という代表的な皮膚疾患がおこるしくみを、次のように説明 することに成功し、この新概念を 「上皮-免疫微小環境 (EIME epithelial immune microenvironment)」と名 付けました。
① 皮膚には、毒物やカビなど、体外のさまざまな有害な因子を感知して、それぞれを追い出すのに最適の反 応をひきおこすしくみがあり、このしくみは主に体表面から 0.2 mm ほどの微小環境がになっている。
② このしくみにかたよりがおこると、皮膚表面の上皮細胞と免疫細胞の相互作用で炎症のループが回り始 め、悪玉菌の影響や感覚神経のはたらきも結果的にこのループを通ることで炎症に影響をあたえる。
③ このしくみを明らかにすることで、あたらしい治療につながる可能性がある。

3.波及効果、今後の予定

上皮-免疫微小環境 (EIME) が、肺や腸など、皮膚以外の臓器でも、病気のおこりやすさやその性質に影響 をあたえるかどうか、そのしくみが注目されます。これらのしくみを明らかにすることで、これまでの免疫細 胞を標的とする治療以外に、EIME を標的とする新しい治療が生み出される可能性があります。

4.研究プロジェクトについて
本研究費の一部は、日本学術振興会科学研究費 基盤 S「皮膚を場とする外的刺激に対する生体応答機構の 包括的解明」 研究代表者 椛島健治、研究課題番号 15H05790)および基盤 C 「新規に同定したバリア関連 遺伝子による表皮ストレス応答機構の解明」 研究代表者 大日輝記、研究課題番号 18K08295)によりまか なわれました。

<研究者のコメント>
免疫やアレルギーの研究者だけではなく、生物学や数学、工学など、さまざまな分野の研究者にこの概念を 理解してもらうことで、医療や科学の発展に貢献したいと思います。

<論文タイトルと著者>

タイトル :The epithelial immune microenvironment (EIME) in atopic dermatitis and psoriasis. (アトピー性皮膚炎と乾癬の上皮-免疫微小環境 (EIME))
著 者: Dainichi T, Kitoh A, Otsuka A, Nakajima S, Nomura T, Kaplan DH, Kabashima K.
掲 載 誌 :Nature Immunology DOI: 10.1038/s41590-018-0256-2.
URL :https://www.nature.com/articles/s41590-018-0256-2
全文 :https://rdcu.be/bbMoH 閲覧のみ)

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