オプジーボ®︎による免疫療法の最適化が可能となる検査法を開発

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血清中の治療効果予測因子を世界で初めて発見

2018/11/19  東北大学病院,東北大学大学院,日本医療研究開発機構AMED: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • 根治切除不能悪性黒色腫注1への抗PD1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ®)単剤での治療効果は約30%前後であり、治療効果を予測する検査法の開発が待ち望まれている。
  • ニボルマブを用いた悪性黒色腫の治療において、血清中の治療効果予測因子を世界で初めて発見し、その治療効果を予測する検査法を開発した。
  • 今回開発した検査法により、ニボルマブ単剤で治療効果が出るかどうか治療早期に判断することができるため、無効な治療の継続を回避し、不必要な副作用発症を避け、効率的に治療薬を使用できるなど、ニボルマブによる免疫療法の最適化につながる。
概要

東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の相場 節也(あいば せつや)教授、東北大学病院皮膚科の藤村 卓(ふじむら たく)講師らの研究グループは、根治切除不能悪性黒色腫治療薬であるニボルマブを用いた免疫療法において、その治療効果を予測する検査法を開発しました。

治療効果を予測することは、高額な治療薬を効率良く使用するために重要であり、また重篤な副作用を発症するリスクを下げることが可能となります。ニボルマブが効かないにも関わらず投与を続けることを避けるため、治療効果を予測する検査法の開発が待ち望まれていました。本研究では、血清中の治療効果予測因子を世界ではじめて発見し、投与3ヶ月目におけるニボルマブの治療効果を、投与6週目に予測できるシステムを開発しました。

本研究成果は、平成30年11月19日午前4時(グリニッジ標準時、日本時間11月19日午後1時)英国科学雑誌「Frontiers in Oncology」電子版に掲載されます。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)「免疫チェックポイント阻害薬使用による免疫関連副作用予測システムの開発」の支援を受けて行われました。

研究内容

2018年のノーベル生理学・医学賞は、「免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用」により本庶 佑博士とJames P. Allison博士が受賞されました。この研究から開発につながった免疫チェックポイント阻害薬注2の一つであるニボルマブは、2014年に根治切除不能悪性黒色腫に対する免疫療法として保険適応が承認され、その後、肺がん、胃がん、ホジキンリンパ腫、腎細胞がんなど多くのがん腫への適応拡大が認められ、現在、多くのがん患者に投与されています。しかし、悪性黒色腫の患者に単剤で使用した場合、その治療効果が表れる確率は30%前後とそれまでの治療薬に比べて効果が高いものの、効果が出ないため別の治療が必要となる場合が70%程度存在します。

現在、ニボルマブで治療効果が乏しい場合には、もう一つの免疫チェックポイント阻害薬である抗CTLA4抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ®)が選択肢としてあります。しかし、ニボルマブ使用中にがんが進行した場合、イピリムマブの治療効果は5%前後と非常に低く、がんが進行する前にイピリムマブに切り替える必要があります。また、ニボルマブ単剤投与の場合、入院が必要なほど重篤であり、自己免疫に関連した様々な副作用が10%前後の確率で発症するのに対して、ニボルマブとイピリムマブを併用した場合、副作用の発症率が55%前後に上昇することが知られています。もしも、ニボルマブ単剤で治療効果が出るかどうか治療早期に判断することができれば、患者は不必要な副作用発症のリスクを回避することができます。

今回の研究では、根治切除不能悪性黒色腫患者において、ニボルマブ投与開始時と投与6週目の血清中の可溶性タンパク質CD163注3を計測した後、投与3ヶ月目における治療効果を画像診断などで確認しました。CD163は腫瘍随伴性マクロファージのほとんどに含まれますが、マクロファージが活性化されると可溶性CD163として血中に放出されます。可溶性CD163が上昇したグループでは的中率85%(59例中50例)でニボルマブの治療効果が見られたのに対し、下降もしくは変化がなかったグループでは的中率87%(59例中51例)で効果は見られませんでした。これにより、ニボルマブによる悪性黒色腫の治療において、可溶性CD163は血清中の治療効果予測因子であることを世界で初めて発見し、これをバイオマーカー注4として使用することで、ニボルマブによる免疫療法の最適化が可能となる検査法を開発することができました。

この検査法により、投与開始後6週目に採血をするだけで、ニボルマブ単独療法の治療効果が出るかどうか早期に判断することが可能となります。加えてニボルマブ単独療法で効果が出る患者は、不必要なイピリムマブとの併用投与による重篤な副作用を回避することができます。

なお、腫瘍随伴性マクロファージは悪性黒色腫以外の多くのがん腫でも認められるため、本検査法は他のがん腫への応用が期待できます。

用語説明
注1.根治切除不能悪性黒色腫:
メラノーマとも呼ばれる皮膚がんの一種で、外科的切除で根治することが不可能なもの
注2.免疫チェックポイント阻害薬:
がん細胞は免疫細胞の表面に存在するタンパク質(免疫チェックポイント)と結びつくことにより、免疫細胞によるがん細胞への攻撃を止めているが、この免疫チェックポイントをブロックすることにより、腫瘍免疫を活性化する薬剤
注3.CD163:
ヘモグロビンスカベンジャー受容体としても知られ、単球またはマクロファージでのみ発現するⅠ型膜貫通タンパク質。
注4.バイオマーカー:
血液や尿などの中に含まれるタンパク質等の生体内の物質。病気の治療や副作用発症の目安となる。
論文題目
English Title:
Serum level of soluble CD163 may be a predictive marker of the effectiveness of nivolumab in patients with advanced cutaneous melanoma
Authors:
Taku Fujimura, Yota Sato, Kayo Tanita, Yumi Kambayashi, Atsushi Otsuka, Yasuhiro Fujisawa, Koji Yoshino, Shigeto Matsushita, Takeru Funakoshi, Hiroo Hata, Yuki Yamamoto, Hiroshi Uchi, Yumi Nonomura, Ryota Tanaka, Megumi Aoki, Keisuke Imafuku, Hisako Okuhira, Naoko Wada, Hiroyuki Irie, Takanori Hidaka, Akira Hashimoto, Setsuya Aiba
掲載誌名:
Frontiers in Oncology(電子版)
doi:
10.3389/fonc.2018.00530
問い合わせ先
研究に関すること

東北大学病院皮膚科
東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野
藤村 卓(ふじむら たく)
神林 由美(かんばやし ゆみ)

報道に関すること

東北大学病院広報室

AMED 事業に関すること®®

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部 がん研究課

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