昆虫の産卵意思決定における他者情報の活用規則を発見

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物足りないなら模倣せよ、充たされたなら革新せよ

2018/09/14  京都大学

大竹遼河 農学研究科修士課程学生、土畑重人 同助教は、昆虫のアズキゾウムシが産卵するときに他個体の産卵の有無を参照し、アズキゾウムシにとって魅力的な産卵場所が与えられた状況ではすでに卵がある場所を避ける一方、魅力的な産卵場所がない状況ではすでに卵がある場所を選んで産卵するという現象を発見しました。

本研究成果は、2018年8月30日に、ドイツの国際学術誌「Animal Cognition」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

ラーメン激戦区に行ったとき、ガラガラの店と行列のできている店があったとして、みなさんは入る店をどのようにして選ぶでしょうか。行列ができている店は有名店なのかもしれませんが、待ち時間も長そうです。もしも、すべての店がミシュランの三つ星だったらどうでしょうか。

今回の研究結果は、私たちと同じ動物の一員でありつつ、生きかたの全く異なる昆虫、アズキゾウムシが、同じような意思決定の問題に直面したときに出した答えです。彼らは今回みられたような柔軟な意思決定を、自然界での長い進化の過程で身につけてきたものと考えられます。今後は、その進化の過程がどのようなものであったかを明らかにしていきたいと考えています。

概要

生物の生存や繁殖において、外部環境に関する適切な情報に基づいて行動することは非常に重要です。この情報のうち、同種の別個体のふるまいを参照することで得られるものを「社会情報」と呼び、人間を含めた多くの動物が社会情報を利用して意思決定しています。

本研究は、有名な貯穀害虫の一種であるアズキゾウムシのメス成虫が、産卵場所を決めるときにどのように社会情報、環境情報を利用するかを調べました。アズキゾウムシのメス成虫は、飼育環境ではアズキの豆粒の表面に1個ずつ産卵しますが、その性質を利用して同じ大きさのガラス玉の表面にも産卵させることができます。そこで本研究グループは、アズキ、アズキの匂い付きガラス玉、洗浄したガラス玉を与えて、アズキゾウムシの産卵行動を観察しました。

その結果、アズキ、アズキの匂い付きガラス玉という、アズキゾウムシにとって魅力的な産卵場所を与えられた場合には、アズキゾウムシのメス成虫は他者卵のない場所を探して産卵しました。一方、洗浄したガラス玉という魅力的ではない産卵場所を与えられた場合には、他のメスを模倣して、他者卵のある場所を選んで産卵しました。これは、アズキゾウムシのメス成虫が、他のメスが産んだ卵の有無という社会情報をどのように行動に反映させるかを、産卵場所の状況という環境情報に応じて一変させたことを意味し、アズキゾウムシのみならず、動物一般でもほとんど見出されていなかった行動です。

本研究成果は、昆虫の認知システムの巧妙さを示すと同時に、農業害虫であるアズキゾウムシの防除手法への応用の可能性も拓くものと考えられます。

図:アズキ(左)、ガラス玉(右)の表面に産卵しようとしているアズキゾウムシのメス

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1007/s10071-018-1212-0

Ryoga Otake, Shigeto Dobata (2018). Copy if dissatisfied, innovate if not: contrasting egg-laying decision making in an insect. Animal Cognition.

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