有機トランジスタを使った多値論理演算回路の開発に成功

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フレキシブルエレクトロニクスの高性能化に期待

2018/07/02 物質・材料研究機構

NIMSは、2種類の異なる有機トランジスタを組み合わせることで、3つの値をスイッチできる多値論理演算回路の開発に成功しました。

概要

  1. 物質・材料研究機構 (以下NIMS) は、2種類の異なる有機トランジスタを組み合わせることで、3つの値をスイッチできる多値論理演算回路の開発に成功しました。本成果は、高集積化が困難だった有機トランジスタの弱点を克服し、大幅な計算機能の向上に寄与することが期待されます。
  2. 軽くて柔らかい有機材料を使った電子素子は、印刷技術を使って大面積の素子を製造でき、持ち運びもしやすいことから、直接身につけて汗や心拍数をモニターするデバイスが開発されています。さらに、IoT社会における大量のデータ処理や高速通信に対応するため、有機トランジスタの飛躍的な特性向上が望まれています。しかし有機材料にはこれまでの半導体デバイス開発で養われてきた微細加工技術が適用できず、素子の微細化や高集積化ができないため、高性能化を図るためには従来とは異なる手法を確立しなければなりません。
  3. そこで本研究グループは、ゲート電圧を一定以上に増加させるとドレイン電流が減少するという特殊なトランジスタ (アンチ・アンバイポーラートランジスタ) を、通常のトランジスタと組み合わせた素子を開発しました。ゲート電圧が低いときにはアンチ・アンバイポーラートランジスタに多くの電流が流れます。そこから徐々にゲート電圧が増加すると、二つのトランジスタに同程度の電流値が流れる電圧範囲が現れます。さらにゲート電圧を上げると、アンチ・アンバイポーラートランジスタに流れる電流が減少するため、電流値の大小が逆転します。
  4. 今回開発した独自の素子構造では、このように異なる電流特性を示す2種類のトランジスタを組み合わせることで、3つの値のスイッチングを実現できました。これにより複数の出力値を制御する多値論理演算回路の開発も可能になります。これを応用すれば、たとえひとつのトランジスタのサイズは同じでも、集積度とデータ処理能力を大幅に向上させることができます。今後はこの成果を応用し、これまで有機材料が苦手としてきた高集積化を克服し、柔らかさと高いデータ処理能力を兼ね備えた新しい有機トランジスタの開発を進めます。
  5. 本研究は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点量子デバイス工学グループの若山裕グループリーダーと早川竜馬主任研究員らの研究チームによって行われました。また本研究は 、科研費挑戦的萌芽研究「分子超格子を使った分子トンネル素子の開発」の一環として行われました。
  6. 本研究成果はアメリカ化学会が発行するNano Letter誌に平成30年7月2日オンライン版にて掲載されます。

「プレスリリース中の図 : 多値トランジスタの素子構造」の画像

プレスリリース中の図 : 多値トランジスタの素子構造



掲載論文

題目 : Multi-valued logic circuit based on organic anti-ambipolar transistor

著者 : 小橋和義、早川竜馬、知京豊裕、若山裕
雑誌 : Nano Letters
掲載日時 : 平成30年7月2日午前1時 (現地時間、日本時間2日午後3時)
DOI:10.1021/acs.nanolett.8b01357

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