ISOが光触媒の性能試験方法に関する国際規格を発行

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NEDOプロジェクトの成果が規格化に貢献

2018/04/02 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

国際標準化機構(ISO)から、光触媒の性能試験方法に関する国際規格(ISO19652)が、2018年3月23日付けで正式に発行されました。

ISO19652は、可視光応答型光触媒の有害物の分解性能試験方法を初めて国際規格化したものであり、NEDOプロジェクトで開発した光触媒の成果を用いて、国内の主要メンバーが国際会議に参画し、専門家との議論・調整を重ねてきた結果、日本からの提案が規格になりました。

この規格制定により、海外市場での日本製の可視光応答型光触媒製品の性能を適切に評価できる環境が実現するとともに、光触媒製品の国際競争力の強化が期待できます。

1.概要

光触媒(主に紫外光に応答する酸化チタン(TiO2))は、光照射下で酸化・還元作用によって、空気浄化・脱臭、水質浄化、抗菌、抗かび、抗ウイルス、セルフクリーニングなど、多くの優れた機能を有することから、その応用が拡大しています。特に、外装材など屋外用途が主要であった光触媒製品は、室内環境問題への関心の高まりとともに、室内での適用が進んでいます。そこでNEDOでは、室内光に多く含まれる可視光を利用して室内環境でも高い効果を得ることができる光触媒の開発を目的に、「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト※1」を実施しました(図1)。

可視光応答型光触媒は、これまで多くの製品が開発されていますが、それらの多くは対象物質を部分的にしか分解することしかできず、完全に酸化分解できないことがありました。これに対して、NEDOプロジェクトでは、日常生活空間にある可視光で、シックハウス症候群などの原因とされるアセトアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC※2)を、これまでの可視光応答型光触媒と比較して10倍以上の高活性で完全に酸化分解できる新しい光触媒を開発しました。

さらに、プロジェクトの成果により、このほかにも数多くの実用的な可視光応答型光触媒が製品化され(図2)、それらの特性に応じた各種の性能評価方法の標準化も進められてきましたが、これまで、可視光応答型光触媒の性能を評価する試験方法が体系的に国際標準化されておらず、日本製の信頼性の高い光触媒製品の海外普及を進めていく際の課題となっていました。

このため、一般社団法人日本ファインセラミックス協会では、NEDOプロジェクト「可視光応答型光触媒の性能評価方法に関する標準化事業3」で、まず、2012年6月に日本工業規格(JIS)化に向けた提案を行い、2013年2月にJIS R1757(ファインセラミックス−アセトアルデヒドを用いた可視光応答型光触媒の完全分解性能試験方法)として国内で規格化された後、2013年4月に国内で作成した国際規格原案(NP19652)をISO/TC206(ファインセラミックス)/WG9(光触媒)に提案しました。ISO/TC206の活動は、国際幹事と、WG9のコンビナ※4を、日本から輩出しているなど、日本が主導しています。国際規格原案の提案から約5年間、光触媒工業会を中心とした国内の主要な光触媒企業、大学、産業技術総合研究所などのメンバーが国際会議に参画して、専門家との議論・調整を重ねてきた結果、可視光応答型光触媒の有害物の分解性能試験方法がISO19652として初めて国際規格化されて、2018年3月23日に正式発行されました。

この規格発行により、海外市場において日本製の可視光応答型光触媒製品の性能を適切に評価できる環境が実現するとともに、信頼性の高い光触媒製品の国際競争力の強化が期待されます。

「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」の実施体制(上)と主な成果(下)を表した図1
図1 「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」の実施体制(上)と主な成果(下)
(なお、実施体制はプロジェクト当時のものです。)

可視光応答型光触媒試験方法JIS/ISO標準化状況を表した表1
表1 可視光応答型光触媒試験方法JIS/ISO標準化状況

2.今回の成果

NEDOプロジェクトで開発した高活性の可視光応答型光触媒を用いて、シックハウス症候群などの原因とされるアセトアルデヒドを対象ガスとした、客観的で再現可能な試験方法を国際規格として実現しました。

可視光応答型光触媒の室内環境照明下での酸化分解能力を「完全分解性能」の評価指標とした国際規格ISO19652(ファインセラミックス-アセトアルデヒドを用いた屋内照明環境下での光触媒の完全分解性能試験方法)は、これまで国際標準が制定されていなかった可視光型光触媒の有害物質の分解性能の試験方法を初めて国際規格としたものです(表1)。

3.今後の予定

これまでに、当初予定したいくつかの可視光応答型光触媒のISO提案が完了され、審議中の提案を残して国際規格の制定をほぼ完了しています。こうした取り組みにより、日本製の光触媒製品が世界に普及するとともに、国連SDGs※5目標である、2030年までの大気汚染の減少や都市環境の悪影響の軽減などにも貢献することが期待されます。

NEDOは、今後も日本発の機能性材料の開発や、その性能評価に関する技術開発を推進し、高性能な機能性材料の世界への普及に貢献していきます。

【用語解説】
※1 循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト

2007年度から2012年度まで実施(実証試験のみ2012年8月末まで)。日本発祥の「酸化チタン光触媒技術」を、国際競争力のある産業に育成するため、オールジャパン体制で産業創成を指向したプロジェクト。

※2 VOC

Volatile Organic Compoundsの略称。

※3 可視光応答型光触媒の性能評価方法に関する標準化事業

NEDO循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクトの一環として実施。

※4 コンビナ

Convenor:ISO/TC(Technical Committee)が任命するもので、WG(Working Group)の運営を主導する者。

※5 SDGsSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)のこと。

4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:山田

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本

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0501セラミックス及び無機化学製品
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