災害現場で用いる陸上移動ロボットの性能評価基準策定に向けた試験を実施

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―試験方法や試験環境の妥当性を検証―

2018年2月5日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
福島県

NEDOは、三菱重工業(株)とともに、トンネル災害やプラント災害で活用が期待できる遠隔操縦型陸上移動ロボットの性能評価基準策定に向けた試験を実施しました。

本試験では、トンネル災害やプラント災害が発生した現場を想定し、水溜りや障害物、暗闇、ガス発生源などの特殊環境を模擬的に再現し、陸上移動ロボットの走行距離や時間、搭載された各種センサの収集情報などの性能評価の試験方法の妥当性を検証しました。さらに、災害発生時と日常的な点検時の双方に適用可能なロボットの走破性能を評価する試験方法の検証も合わせて実施しました。

NEDOは、本試験で取得できたデータや今後の取り組みを通じて、トンネルやプラントなどで災害が発生した際に、人が危険な現場に立ち入ることなく状況を把握するための陸上移動ロボットの性能評価基準の策定に貢献します。

試験の全体像(例:トンネル災害)の図

図1 試験の全体像(例:トンネル災害)

1.概要

近年、大規模災害やインフラの老朽化、産業施設などの事故が世界各地で発生しており、災害・事故時の活用に加えて、平時でも使用でき、迅速な事態収拾を可能とする特殊環境用ロボット(防災・減災、災害対応、インフラメンテナンスロボットなど)の配備が急務となっています。

一方で、これらの課題解決に向けたロボットの技術開発が国内でも活発に実施されているものの、特殊環境用ロボットの性能を測るモノサシが明らかになっていません。そのため、技術開発の促進および普及のために、性能を測る試験方法を含めた性能評価基準などの策定が喫緊の課題となっています。

このような背景のもと、NEDOは「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト※1」において、物流やインフラ点検および災害対応分野などでの活用が期待される各種ロボット(無人航空機、陸上ロボット、水中ロボットなど)の性能を実現場に導入する前に評価するための、性能項目や性能評価のための試験方法、および試験に使用する計測システムなどをまとめた日本初の性能評価基準の開発に取り組んでいます。

今般、NEDOは、トンネル災害やプラント災害など人が立ち入ることのできない危険な現場でも状況を確認できる、遠隔操縦型陸上移動ロボットの性能評価基準策定に向け、三菱重工業株式会社とともに陸上移動ロボットの性能評価のための試験方法を確立するための試験を実施しました。

本試験は、トンネル災害やプラント災害が発生した現場を想定し、三菱重工業(株)内に水溜りや障害物、暗闇、ガス発生源などの特殊環境を模擬的に再現し、陸上移動ロボットの走行距離や時間、搭載された各種センサの収集情報など性能評価基準策定に向けた試験方法の妥当性を検証しました。

また、国立大学法人長岡技術科学大学構内に、三次元狭部障害ジャングルジムなどを構築し、災害発生時の活用に加えてプラントでの日常的な点検時でも活用可能なロボットの走破性を評価する試験方法の検証のために必要なデータを取得する試験も実施しました。

これらの試験において、トンネルやプラントなどで災害が発生した際の陸上移動ロボットの活用に向けた性能評価に必要となる各種データとプラントでの日常的な点検時での活用に向けた性能評価のための基礎データも取得することができました。

NEDOは、今後も性能評価基準の策定に貢献すべく準備を進めていくとともに、2030年に7,000億円規模と期待されている社会インフラの維持管理・更新のための陸上移動ロボットを含むロボット関連市場の創出にも寄与します。また、昨年11月22日にNEDOと福島県が締結した「福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定※2」の取り組みの一環として、性能評価基準に基づく試験が「福島ロボットテストフィールド※3」の試験用トンネルや試験用プラントで実施できるよう、本試験から得られた知見を福島県へ提供し、一部福島ロボットテストフィールドの設計に反映される予定です。

福島ロボットテストフィールド 試験用トンネルおよび試験用プラント 完成予想図

図2 福島ロボットテストフィールド 試験用トンネルおよび試験用プラント 完成予想図

2.試験の内容

(1)トンネル災害やプラント災害時の情報収集プロセスに沿った性能評価試験方法の検証に関する試験

陸上移動ロボットによる災害発生後の情報収集プロセスを再現し、模擬災害現場で陸上移動ロボットを走行させ、走行できた距離や搭載された各種センサの性能評価のための試験方法の妥当性を検証しました。

試験で使用した陸上ロボットの写真

図3 試験で使用した陸上ロボット

試験の概要(プラント災害)図

図4 試験の概要(プラント災害)

試験の様子(模擬プラント内の走行性能試験)の写真

図5 試験の様子(模擬プラント内の走行性能試験)

(2)プラント災害と点検の双方に適用させる走破性試験方法の検証に関する試験

陸上移動ロボットの普及のためには、災害発生時に加えプラントなどの日常巡回点検時の双方に適用できることが求められています。そのため、双方の場面に共通する最も基本的(世界的デジュール)かつ厳しい不整地での走破性能の試験を実施し、基礎データを取得しました。

試験で使用したロボットの写真

図6 試験で使用したロボット

走破性を評価する試験方法のイメージ図

図7 走破性を評価する試験方法※4

走破性を評価する試験方法の検証の写真

図8 走破性を評価する試験方法の検証の様子

【用語解説】

※1 ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
プロジェクト期間は2017年度~2021年度の5年間で、2017年度予算は33億円。

※2 福島ロボットテストフィールドを活用したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定
NEDOと福島県の連携を強化し、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において福島ロボットテストフィールドを積極的に活用することでロボット・ドローンの実用化を加速させ、福島イノベーション・コースト構想の推進とロボット・ドローン産業の活性化を図るべく、2017年11月22日に締結した協定。

※3 福島ロボットテストフィールド
物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主対象に、実際の使用環境を拠点内で再現しながら、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点。福島県南相馬市および浪江町で2018年度から順次開所予定。
※4 走破性を評価する試験方法
木村哲也、大金一二:「標準性能試験法を用いた災害対応ロボット開発」、第57回自動制御連合講演会予稿集(2B01-2) T.Kimura and K.Oogane: “Disaster Response Robot Development vis Standard Performance Test Method” in Proc. of SSRR2011より引用。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:宮本、山中、永松

(福島ロボットテストフィールドについての問い合わせ先)

福島県 商工労働部 ロボット産業推進室 担当:北島

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本

 

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