細胞分裂期の染色体凝縮はマグネシウムイオンの増加によって起こる

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―生細胞イメージングにより新たなメカニズムを検証―

A transient rise in free Mg2+ ions released from ATP-Mg hydrolysis contributes to mitotic chromosome condensation

Kazuhiro Maeshima, Tomoki Matsuda, Yutaka Shindo, Hiromi Imamura, Sachiko Tamura, Ryosuke Imai, Syoji Kawakami, Ryosuke Nagashima, Tomoyoshi Soga, Hiroyuki Noji, Kotaro Oka, Takeharu Nagai

Current Biology Published Online January 18, 2018 DOI:10.1016/j.cub.2017.12.035

プレスリリース資料

細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した「染色体」と呼ばれるDNAの束が作られ、2つの細胞に正確に分配されていきます。半世紀以上前、細胞に大量に存在するマグネシウムイオン(Mg2+)がゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがありましたが、当時は細胞内Mg2+濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられていました。

国立遺伝学研究所の前島一博 教授、大阪大学の永井健治 教授、慶應義塾大学の岡浩太郎 教授、京都大学の今村博臣准教授らの共同研究グループは、蛍光タンパク質技術を駆使してMg2+濃度の変化を高感度で感知できる蛍光センサー MARIO を開発し、生細胞内のMg2+濃度を蛍光イメージングにより可視化することに成功しました。そして細胞分裂の際にMg2+濃度が一過的に上昇することを示すとともに、負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにしました(図1)。本研究によって、実際にMg2+が細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明されました。また、Mg2+は通常ATPと結合していますが、細胞分裂でのATPの消費により放出されることで、Mg2+濃度が上昇することも分かりました(図1)。

染色体の形成の失敗はゲノムDNAの損傷を引き起こし、細胞に「死」や「がん化」などのさまざまな異常、さらには疾病をもたらすと考えられています。また細胞のなかに多量に存在するMg2+は多くのタンパク質の働きを助けており、欠乏するとさまざまな細胞異常が現れることが知られています。今回の蛍光センサー開発と生物学的知見の発見は、このような細胞の異常が起こるしくみの解明につながると期待されます。

本研究成果は、2018年1月19日(金)午前2時(日本時間)に「Current Biology」に掲載されました。

本研究は、国立遺伝学研究所・前島一博教授・田村佐知子テクニカルスタッフグループ、大阪大学産業科学研究所・ 永井健治教授・松田知己准教授グループ、慶應義塾大学理工学部・岡浩太郎教授・新藤豊特任助教グループ、京都大学生命科学研究科・今村博臣准教授・東京大学工学研究科・野地博行教授グループ、慶應義塾大学環境情報学部・曽我朋義教授グループの共同研究成果です。

なお、本研究は文部科学省科学研究費・新学術領域「少数性生物学」(領域代表:大阪大学 永井健治教授)、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(CREST) (JPMJCR15G2, JPMJCR15N3)、および科学研究費(16H04746)、日本医療研究開発機構の革新的先端研究開発支援事業 AMED-CRESTの支援を受けました。

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図1:細胞が分裂する際にMg2+が増加し、染色体の凝縮が促進される。ATPの減少によりMg-ATPから遊離したMg2+が供給される。

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図2:新しい蛍光Mg2+センサーMARIOの検出原理 青色と黄色の2種類の蛍光タンパク質が、検出タンパク質(肌色)でつながれている。Mg2+が検出タンパク質に結合すると、2種類の蛍光タンパク質が引き寄せられ、FRETと呼ばれるエネルギーの移動が起こり、紫の光を照射したときに放射される蛍光の色が青から黄にシフトする。

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