ICTを活用した圃場(ほじょう)-水利施設連携による効率的な配水管理制御システムを開発

スポンサーリンク

2018/11/12  農研機構

農研機構は、ICTを活用して土地改良区等が管理するポンプ場から農家が管理する圃場の自動給水栓までを連携させ、水利用に応じた効率的な配水を行う水管理制御システムiDASアイダスを開発しました。開発したシステムは、パイプラインによる水田灌漑かんがい地区の施設管理者の省力化、農業用水の節水 、ポンプ電力の節減への貢献が期待されます。

概要

パソコンやタブレット端末、スマートフォン等の操作により、パイプラインによる農業用水の供給を制御する配水管理制御システムiDAS(iDAS: Irrigation and Drainage Automation System)を開発しました。(図1)
現在ICT・IoTを活用した自動給水栓の導入など、圃場の水管理の省力化に向けた取り組みが進んでいますが、土地改良区が管理するポンプ場等の水利施設は、主に手動で管理されており、管理労力や節水・節電の観点からも水管理の効率化・自動化が求められています。今回開発したiDASは、圃場の水利用に応じた効率的な配水が自動的に行えるようになり、施設管理者の省力化とポンプの節電・節水効果が期待されます。また、別に開発されている自動給水栓等と連携することにより、農家の水管理の省力化に加えて水配分状況の把握による計画的な灌漑が可能となります。
実証試験では、低平地水田パイプライン灌漑地区への本システムの導入により、ポンプ場の消費電力が40%削減されました。また、パイプラインの圧力を適正に保ちつつ配水するため、管内圧力は大幅に低下しており、パイプラインの長寿命化にも効果が期待できます。現在も複数の条件の異なる地区で実証試験を継続中です。
開発したシステムは、ポンプ場など農業水利施設の管理を行う土地改良区を対象として、国営・県営や団体営の土地改良事業における導入が期待されます。

<関連情報>
予算:内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(次世代農林水産業創造技術)」
(管理法人:農研機構 生物特定産業技術研究支援センター)
特許:特願2018-027277、特願2017-068651

お問い合わせ

研究推進責任者:
農研機構農村工学研究部門 研究部門長 白谷 栄作

研究担当者:
同 水利工学研究領域 中矢 哲郎

広報担当者:
同 広報プランナー 遠藤 和子

詳細情報

開発の社会的背景と研究の経緯

わが国の水田地帯では、土地改良区等が管理する頭首工(取水堰)やポンプ場等の水利施設で取水した農業用水を、各農家の水田にパイプラインで供給する「パイプライン灌漑」が推進されています。
現在、ICTを活用した自動給水栓や水位計などを用いた、水田水管理の省力化に向けた取り組みが進んでいます。しかし土地改良区によるポンプ場等の施設管理は、主に手動で行われており、施設管理にかかる労力が問題となっていました。また、ポンプ場等では日中は連続運転によって一定流量を送水している場合が多く、節水や節電の観点からも管理の効率化・自動化が求められていました。
そこで農研機構は、ICTを利用してポンプ場から水田の自動給水栓までを連携して制御し、パソコンやタブレットの簡単な操作で配水管理ができる配水管理制御システムの開発を行いました。

開発したシステム「iDAS」の特長
  1. 農家による圃場水管理と土地改良区による水利施設管理を一体的に対応できます。
    担い手農家などの水田管理者が管理する自動給水栓等と、土地改良区等の施設管理者が管理するポンプ場などの水利施設までを一つのシステムとして連携して扱い、パソコンやタブレットの簡単な操作で配水管理が可能です。主にポンプを用いた水田パイプライン灌漑地区(受益面積10~100ha)に適用できます。
  2. 水田での水利用をモニタリングしながら、ポンプ場等から必要な水量を自動で配水することで節水・節電を実現できます。
    水田の情報(水位など)と土地改良区などの施設管理者の給水スケジュールと、パイプライン解析に基づく配水制御アルゴリズムによりポンプ場から効率的な配水を自動で行うことができ、水管理の省力化と水利施設の大幅な節水・節電が可能です。2017年に実施した2ヶ所の実証試験地(茨城県取手市:3.5ha、茨城県龍ヶ崎市:7.5ha、いずれも 直送式1)ポンプ)( 図2、 3、 4)では、本システムの導入前と比べ、ポンプ場と水田における水管理の省力効果、ポンプ場の消費電力が40%削減されることが確認されました。
  3. 様々な制御機器と接続、連携可能な拡張性を有するシステムです。
    本システムは、監視制御ソフト、サーバー、現地制御用PLC2)、LPWA3)等の無線通信機器がパッケージとなっており、クラウドサーバーを用いることから圃場水管理アプリなど外部システムとのAPI連携4)が可能です。また多様なセンサー類、制御機器に対応しており、地域の実情に合ったシステム構築が可能です。またスマートフォン、タブレット端末、パソコン等、管理形態に応じた監視制御機器を選択することが可能です。(図5)
  4. パイプラインの老朽化対策として効果が期待できます。
    実証試験において、システム導入前と比べてパイプラインの管内圧力は6割減となりました。本システムは、施設の老朽化とともに高い管内圧力に起因するパイプライン破損事故等への対策として効果が期待できます。
今後の予定・期待

開発したシステムは、全国の受益面積10~100haのポンプ場など農業水利施設の管理を行う土地改良区を対象に、国営・県営土地改良事業、団体営土地改良事業による導入が期待されます。
2017年から実施している茨城県内2ヶ所、千葉県内1ヶ所と愛知県内2ヶ所に加え、現在、中山間水田地域の水田パイプライン灌漑地区の合計6箇所で実証試験を行っており、様々な条件での水管理労力の削減効果や、節水・節電効果を検証しています。
本年度は、PLCデータとクラウドの通信を行うIoTルーターの開発と、ランニングコストや使用性に配慮したWEBアプリの改良を行いiDASの普及版を完成させます。さらに中山間地域の水田パイプライン灌漑地区へも実証試験地を拡大し、全国的な普及に向けて取り組んでいきます。

用語の解説

1)直送式:ポンプ場から水田にある給水栓まで直接農業用水を送る方式。

2)PLC:Programable logic controllerの略。入出力部を介して各種装置の制御を行う、プログラマブルな命令を記憶するためのメモリを内蔵した電子装置。リレー回路では煩雑になる入出力点数が多い装置や複雑な構造の対象を制御できます。

3)LPWA:Low Power Wide Areaの略。低消費電力で広域を対象にできる無線通信技術の総称。通信速度は携帯通話システムより低速ですが、省電力で長距離通信を要する、IoT(Internet of Things)に特化した通信規格として、開発が進められています。

4)API(連携): Application Programming Interfaceの略。ソフトウェア同士が互いにやりとりするのに使用するインタフェースの仕様で、ソフトウェアをWEB上に一部公開して、他のソフトウェアと機能を共有できるようにし、誰でも外部から利用することができるようにしたもの。これによって、自分のソフトウェアに他のソフトウェアの機能を埋め込むことができるようになるので、アプリケーション同士で連携することが可能になります。

発表論文

節水・節電のための圃場と用水機場が連携した灌漑配水システムの試作:中矢哲郎,樽屋啓之,浪平 篤,中田 達,中 達雄,農業農村工学会誌(2016)、水土の知、84(10)、pp.19-22
土地改良施設の管理におけるICTの活用 -圃場と土地改良施設が連携した水管理制御システム iDASの開発-: 中矢哲郎、材料と施工(2018)、No.56、pp. 33-41

参考図


図1 開発したシステムの概要


図2 現地に導入したシステムの管理画面(茨城県龍ヶ崎市)
取水源のポンプ場等にiDASを導入し監視(図中赤枠)できます。また、同時に導入した圃場水管理システムと連携しているため水田等の状況も確認(図中黄色枠)できます。


図3 現地実証試験の概要(左)とポンプ場の概要(右)
(茨城県龍ヶ崎市水田パイプライン灌漑地区の例)


図4 自動給水栓(左)とポンプ場の制御盤(右)
(茨城県龍ヶ崎市水田パイプライン灌漑地区の例)


図5 様々な端末での監視・制御
スマートフォンによるポンプの監視・制御(担い手、施設管理者向け(左))パソコンによる管理(土地改良区向け(右))

スポンサーリンク
スポンサーリンク