卵巣がんを早期から検出できる血液中マイクロRNAの組み合わせ診断モデル作成

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2018/10/17  国立がん研究センター,日本医療研究開発機構

本研究のポイント
  • 世界的にも類を見ない計4046例の大規模なヒト血清中マイクロRNAを解析
  • 卵巣がん患者で有意に変化する複数のマイクロRNAを同定し、それらの組み合わせにより卵巣がんを早期から高精度で検出できる診断モデルの作成に成功
  • 卵巣がん診断血液スクリーニングの実現に大きな前進をもたらす成果である
概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)研究所分子細胞治療研究分野(落谷孝広 プロジェクトリーダー[現 東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療部門 教授]、横井暁 特任研究員[現 MD Anderson Cancer Center 博士研究員]、松﨑潤太郎 特任研究員)は、早期診断が困難で予後の悪い卵巣がんについて、血液により高い精度(感度99%、特異度100%)で卵巣がんを検出する診断モデルの作成に成功しました。

本研究では、卵巣がんを有する方と有さない方計4046例の血液(血清)中のマイクロRNAを網羅的に解析し、卵巣がんで有意に変化する複数のマイクロRNAを同定し、そのうち10種のマイクロRNAを組み合わせることで卵巣がんを早期から検出可能であることを確認しました。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」の支援を受け行ったもので、研究成果は英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

本研究成果について、国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科長の加藤友康は次のように述べています。「卵巣がんは15歳以上のすべての年齢で増加傾向にあります。卵巣がんの初期は症状に乏しく、およそ半数が進行した状態で発見されます。既存の腫瘍マーカーにこの新しい血液検査を組み合わせて一次スクリーニング、そして二次スクリーニングには超音波検査というプログラムが、卵巣がんの早期発見と治療成績向上に寄与することが期待されます。」

研究背景
卵巣がんについて

卵巣がんは年間約1万人が罹患し、その半数である約5000人が命を落とす大変予後の悪いがんです。卵巣は、骨盤内に位置するため、がん発生初期の段階では自覚症状に乏しく早期診断が極めて困難で、発見時にはすでに転移を伴う進行症例が6割を超えます。

そのため卵巣がんは、早期発見が強く望まれるがん種ではありますが、科学的に有効なスクリーニング方法は存在せず、初期の卵巣がんの多くが産婦人科受診の経腟超音波検査や、他の画像検査の際に偶発的に発見されており、非侵襲的かつ簡便な早期診断方法の確立が長年の大きな課題となっています。

マイクロRNAとは

血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのこと。近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっています。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失等の病態の変化に相関するため、全く新しい診断マーカーとして期待されています。

研究概要

本研究では、卵巣がん428例とその他のがん859例、がんを有さない2759例の計4046例全例の血液(血清)中マイクロRNAを網羅的に解析し、卵巣がん患者で有意に変化する多くのマイクロRNAを同定し、それらの組み合わせを利用した統計的解析により卵巣がん患者を特異的に判別できる判別式(診断モデル)を作成しました。

また、解析対象例を探索群と検証群の2つにわけその精度を検証した結果、同モデルは卵巣がん患者全体の98.8%を正しくがんであると判別することができ(図1)、診断精度の極めて高い(感度99%、特異度100%)診断モデルの作成に成功したことを確認しました。

ステージ別の検証においては、ステージII–IVの患者群を100%陽性と診断でき、ステージIの患者群においても95.1%の極めて高い精度で陽性と診断することができました。

図1:卵巣がん診断モデルの制度

図2:卵巣がん病期別の検討

展望

本研究により作成された診断モデルは、過去に類を見ない、極めて高い診断精度であり、かつその精度を血液からの情報のみで実現できたことは大変意義の大きい成果です。本研究成果を今後、前向きの臨床研究でさらに検証および最適化を重ねることで、卵巣がん検診確立の実現に向けて大きな前進が強く期待できます。血液検査による卵巣がん検診の確立は、卵巣がん診療にパラダイムシフトをもたらす試金石となり得るもので、その実現に向けて今後も研究を継続します。

共同研究者

本研究は、以下の施設を含む、研究グループによる取り組みの成果です。また、研究に使用した血清は、国立がん研究センターバイオバンク、国立長寿医療センターバイオバンク等から提供いただきました。試料提供にご協力・ご賛同してくださった患者・家族の皆様へも深く御礼を申し上げます。引き続き、生体試料を用いた研究に対するご理解とご支援をお願いいたします。

  1. 国立がん研究センター
    中央病院 婦人腫瘍科 加藤友康 科長
    中央病院 バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室 加藤健 室長
  2. 国立長寿医療研究センター
    メディカルゲノムセンター 新飯田俊平 センター長
  3. 東レ株式会社
  4. 株式会社ダイナコム
発表論文
雑誌名:Nature Communications
タイトル:Integrated extracellular microRNA profiling for ovarian cancer screening
著者:Akira Yokoi, Juntaro Matsuzaki, Yusuke Yamamoto, Yutaka Yoneok, Kenta Takahashi, Hanako Shimizu, Takashi Uehara, Mitsuya Ishikawa, Shun-ichi Ikeda, Takumi Sonoda, Junpei Kawauchi, Satoko Takizawa, Yoshiaki Aoki, Shumpei Niida, Hiromi Sakamoto, Ken Kato, Tomoyasu Kato, Takahiro Ochiya
お問い合わせ先
研究内容に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター
研究所 分子細胞治療研究分野
落谷孝広(おちや たかひろ)/松﨑潤太郎(まつざき じゅんたろう)

その他

企画戦略局 広報企画室

AMED事業に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
創薬戦略部医薬品研究課

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