日本固有のサルであるニホンザルのiPS細胞の作製に成功

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iPS細胞を使った霊長類の脳神経科学や進化研究への展開

2018/09/06 京都大学,ドイツ・ルートヴィッヒ・マクシミリアン大学

仲井理沙子 霊長類研究所修士課程学生、今村公紀 同助教、大貫茉里 ドイツ・ルートヴィッヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン研究員らの研究グループは、iPS細胞研究所と共同で、ニホンザルの皮膚の培養細胞からiPS細胞を作製することに初めて成功しました。さらに、ニホンザルのiPS細胞を神経細胞のもとになる神経幹細胞へと選択的に分化誘導することに成功しました。

本研究成果は、2018年8月15日に英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

ニホンザルは私たち日本人にとって馴染み深いサルであるとともに、研究の世界でも日本の霊長類学や脳神経科学の発展を支えてきました。今回、ニホンザルのiPS細胞を作製したことで、これまで解析が難しかった発生生物学や遺伝子機能解析についても研究が進展すると期待されます。本研究は、本学の霊長類学とiPS細胞の研究者が力を合わせることで達成できました。iPS細胞の可能性は、医療分野だけに留まりません。ニホンザルのiPS細胞を活用することで、霊長類学やヒト進化生物学といったiPS細胞の別の可能性を提示していきたいと考えています。

概要

ニホンザルは日本の固有種であり、世界最北端に生息するサルです。温厚で我慢強く、器用で学習能力も高いことから、認知・運動機能などの脳神経科学の発展にも貢献してきました。しかし、ニホンザルの特徴を形成する個体発生と分子メカニズムについては、ほとんどが未解明のままでした。本研究グループは、ヒトやマウスで蓄積されてきたiPS細胞技術を応用し、ニホンザルのiPS細胞の作製に世界で初めて成功しました。

ニホンザルのiPS細胞の作製には新生児(生後6日齢)と成体(21歳)の皮膚由来の培養線維芽細胞を用い、センダンウイルスによって効率よく初期化因子の遺伝子導入を行いました。さらに、フィーダー細胞と呼ばれる培養をサポートする細胞と一緒に培養することで、未分化な状態を維持することができました。さらに、ニホンザルのiPS細胞から神経幹細胞を選択的に分化誘導し、ニューロン(神経細胞)へと効率的に分化することにも成功しました。

本研究成果により、ニホンザルのiPS細胞は脳神経科学の研究に有用であり、遺伝子や細胞の観点からニホンザルの特性を研究する道筋が示されたと言うことができます。また、ニホンザルiPS細胞は半永久的に保存できることから、絶滅の危機にある霊長類をiPS細胞の形で保存するなどの応用も今後期待されます。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-018-30734-w

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/234223

Risako Nakai, Mari Ohnuki, Kota Kuroki, Haruka Ito, Hirohisa Hirai, Ryunosuke Kitajima, Toko Fujimoto, Masato Nakagawa, Wolfgang Enard & Masanori Imamura (2018). Derivation of induced pluripotent stem cells in Japanese macaque (Macaca fuscata). Scientific Reports, 8:12187.

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