「日本最古!? 諏訪で発見された 300 年前の押し葉・押し花」 調査研究と公開展示について

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国立科学博物館,諏訪市博物館

 約300年前の享保年間に製作された「押し葉・押し花」が、昨年、諏訪市博物館に寄贈された資料 から見つかりました。資料の評価・同定依頼を受けた国立科学博物館が諏訪市博物館と調査したと ころ、現在知られている採取年月日や採取場所、採取者などの記録がある日本産植物資料として は、国内最古となる「押し葉・押し花」であることが分かりました。
見つかった「押し葉・押し花」資料を、国立科学博物館と諏訪市博物館で、その同定結果や当時の文献 資料の比較などと共に、各館で展示を行います。

科博NEWS展示 「日本最古!? 諏訪で発見された300年前の押し葉・押し花」
【開催場所】 国立科学博物館(東京・上野公園)地球館2階リンクコーナー
【開催期間】平成30年8月21日(火)~9月9日(日)

特別展「日本最古!? 諏訪で発見された300年前の押し葉・押し花」
【開催場所】諏訪市博物館企画展示室
【開催期間】 平成30年9月15日(土)~10月14日(日)

■資料概要

約 300 年前に、諏訪高島藩に仕えた渋江隼之丞(のち民右衛門古伴)が製作した「押し葉・押し花」 が、平成 29 年 10 月に、渋江家から諏訪市博物館に寄贈されました。国立科学博物館は、その資料評 価の依頼を受け、地域資源の発見、活用に協力する為、諏訪市博物館と「押し葉・押し葉」の保存状況 や製作由来、植物同定などの調査を開始しました。
寄贈された「押し葉・押し花」は、採取場所や日時、採取者、和歌などを記した和紙 25 枚にそれぞ れ採取植物が貼り付けられた額装仕立てのものでした。額装は、昭和 62 年に渋江家で発見された後に 行われたもので、保存の観点から修復を行いました。「押し葉・押し花」の製作者は、資料にある題簽 に『享保年間 自得院様御拾収之植物』とあり、渋江隼之丞の戒名が自得院であること、渋江家に伝 来してきたものであることなどから、渋江隼之丞自身が製作したと考えられます。採取、製作年代 は、その時期などから渋江隼之丞が、御側小姓として高島藩 4 代藩主諏訪忠虎の大坂警護の任(注 1) などに随伴した時、大坂周辺で採取されたものと考えられます。享保 4 年が最も古く、「天王寺二また の竹の葉 享保四己亥六月朔日、家僕持参」、また「三井寺地内、櫻葉 同、款冬返花 享保四己亥年 八月四日、大駕暫留拾之」(写真 1 右)や「三井寺地内松邉此樹根常の木にて 三四尺より上枝葉とる に五葉なり 依葉を拾 享保四己亥年八月四日、大駕暫留拾之」(写真 1 左)と書き添えられていま す。これは渋江隼之丞がこの三井寺参拝時に残したと思われる文書中にある「一切経堂有、飛騨の工 たけたのはんしやうたつるよし、度々の炎焼にそこねすと云、尤いと□□□本堂左の方ニ桜木の株 三、四尺斗成有、是入相の鐘に花のちりし木のよし」や「左に松有、根ハ常にて枝葉五葉也、右門よ り壱丁斗来り左ニ堂有、食堂と云」の記述と一致しており、関連資料も含めて採取地や採取状況まで 伺える貴重な資料です。この他の「押し葉・押し花」の採取年時などは享保 4(1719)年、享保 5 年、 寅年(注 2)、享保 9 年、その他不明の計 25 点であり、採取年月日や採取場所、採取者などの記録が 残る植物資料としては、確認できる国内に現存する最古の実物資料として、きわめて貴重なものであ ることが分かりました。
国立科学博物館と諏訪市博物館は、正式に共同で調査、展示を行う協約を結ぶこととし、調査を継続 すると共に、修復が終わった「押し葉・押し花」を公開することとしました。

注 1: 大坂加番の任で、大坂城の城番に加勢して警護を勤める役目のこと。1~3 万石の大名の中から 4 名が選任され、 任期は 1 年。
注 2:壬寅の享保 7 年か。

写真 1 (右)三井寺地内、櫻葉 同、款冬返花 享保四己亥年八月四日
(左)三井寺地内松邉此樹根常の木にて 三四尺より上枝葉ともに五葉なり 依葉を拾
享保四己亥年八月四日

http://www.kahaku.go.jp/event/2018/08oshibaoshibana/oshibaoshibana2018.pdf

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