超薄膜の白金がトランジスタ特性を発揮することを発見

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固体物理学における理解を覆す発見

2018/08/08 京都大学

白石誠司 工学研究科教授、セルゲイ・ドゥシェンコ 同博士研究員(研究当時、現:米国標準化研究所及びメリーランド大学研究員)、外園将也 同修士課程学生らの研究グループは中村浩次 三重大学准教授と共同で、金属である白金を極めて薄い膜(超薄膜)にしたとき、シリコンなどの半導体で実現されるトランジスタ特性(材料の抵抗を外部電圧で制御する特性)が現れること、さらにそれに伴って白金がスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」という機能を大幅に変調・制御ことができることを世界で初めて発見しました。

固体物理学における常識を覆す発見であり、特にエレクトロニクスやスピントロニクス分野の新しい発展に繋がる成果です。

本研究成果は、2018年8月7日に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

Dushenko博士とのフランクな議論の中で、まるで天から降ってきたように湧いたアイディアを形にでき、大変幸せです。研究の本質とは「セレンディピティ」である、とはよく言われる言葉ですし、発想の転換の重要性を意味する「コロンブスの卵」も研究者には重要な言葉です。正にその「セレンディピティ」と「コロンブスの卵」の結晶が今回の結果です。これからも好奇心と奇抜でも確固たる発想を大事にして研究を続けていきたいと思っています。

概要

今日の情報社会の隆盛をもたらしたトランジスタは、半導体(現在は一般的にシリコンが用いられる)中のキャリア(電子または正孔)をゲート電圧で誘起することで、抵抗の大きさを制御し、情報のオンとオフを操作します。

しかし、金属は一般的にキャリアの数が非常に多いために、ゲート電圧によってキャリアを誘起しても、抵抗を変えることは困難でした。

本研究グループは、まず2ナノメートルという極めて薄い白金(Pt)の膜(超薄膜)を、磁性絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)の上に作製しました。そして、このPt超薄膜の上にイオン液体をのせて強いゲート電圧をかけたところ、上記のような半導体で実現されるトランジスタ特性が現れることを発見しました。

さらに、基盤であるYIGからスピン流(*)をPt超薄膜に注入したところ、Ptがスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」という機能を大幅に変調・制御することができることも見出しました。

これは従来の「金属材料を使ってトランジスタを作ることはできない」という理解と「スピン軌道相互作用は材料固有である」という固体物理学における理解を共に覆す発見であり、特にエレクトロニクスやスピントロニクス分野の新しい発展に繋がる画期的成果です。

*スピン流・・・電子の2つの自由度である電荷自由度とスピン自由度のうち、後者のみの流れのこと。スピン自由度のみを制御できれば、実際には電流は流れないため、例えば情報伝搬において究極の省エネとなる。

今回の研究で用いた素子の構造図と実験の概念図

白金の極めて薄い膜(超薄膜:厚さ2ナノメートル)をイットリウム鉄ガーネット(YIG)基板の上に作成し、そこにイオン液体を用いたゲート電極を搭載し強い電圧をかけると、白金に電子が多数注入されるため、白金の電気抵抗が変化する。

詳しい研究内容について

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