卵の品質はDazl遺伝子の適切なONとOFFで制御される

2018/06/14 国立遺伝学研究所
Requirement of the 3′-UTR-dependent suppression of DAZL in oocytes for pre-implantation mouse development

Kurumi Fukuda, Aki Masuda, Takuma Naka, Atsushi Suzuki, Yuzuru Kato, and Yumiko Saga

Plos Genetics Published: June 8, 2018 DOI:10.1371/journal.pgen.1007436

卵子形成は様々な遺伝子の適切な発現によって進行します。マウスの卵子形成に重要な遺伝子の一つ、Dazlはノックアウトすると不妊になり、胎児期も生後もRNAの発現があること等から、卵子形成過程を通じて必要な遺伝子と考えられてきました。

本研究ではこれまでの通説に反し、胎児期の雌性生殖細胞の発生にDazlは必須であるが、生後の卵胞形成においては、むしろDazlは抑制されることが受精後の胚発生の正常な進行に必要であることを明らかにしました。Dazlの発現抑制が破綻すると一部の受精卵は胚発生を停止し、その結果、産子数が減少すること、また、この抑制は3’UTRを介した翻訳抑制によって行われることが新たに分かりました。以上の結果は、卵母細胞におけるDazlの必要性について再考を迫るものです。

本研究は情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の福田胡桃(学振特別研究員)、加藤譲(助教)、相賀裕美子(教授)と、横浜国立大学の鈴木敦(准教授)らにより、以下のサポートを受けて行われました。
日本学術振興会(16J11687(福田胡桃)、25840091(加藤譲)、26251025(相賀裕美子))
文部科学省新学術領域(16H01252(鈴木敦)、16H01259(加藤譲)、25112002(相賀裕美子))

Figure1

図:通常、生後の卵子形成過程においてDAZL蛋白質の発現は3’UTRを介して翻訳抑制される(図左上)。一方、Dazlの3’UTRが欠損した卵子では生後もDAZLが発現し続け、一部の胚発生が停止する(図右上)。コントロールでは着床後3.5日目で殆どの胚がブラストシストになっているが(図左下)、変異体では約半数が途中で発生を停止している(図右下)。黄色の矢印は発生が停止した異常胚。