突発現象発生のメカニズム プラズマ損失の直前予知を可能にする新発見

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プラズマ損失の直前予知を可能にする新発見

2018/04/25 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所

わたしたちの周りには、長期的にみれば必ず起こるが、いつ起こるかを正確に予測することは難しいと言われている現象が存在します。例えば、火山は、マグマが集積されることでエネルギーが溜まっていくのは間違いないのですが、いつどのようなタイミングで噴火するかを正確に予測するのは、大変困難だと言われています。このような現象は「突発現象」と呼ばれており、地震、集中豪雨、太陽フレアー、オーロラ、経済危機等も、その例として挙げられます。突発現象は、エネルギーが溜まり続けているが何も起こらない(準安定な)状態が、何らかの変化を引き金(トリガー)に、別の安定した状態に移り変わる現象だと考えらえています。トリガーを明らかにすることができれば、現象を直前に予知できる可能性があります。今回は、大型ヘリカル装置(LHD)で行われているプラズマの突発現象のトリガーに注目した研究を紹介します。
核融合発電を実現するためには、磁場で高温のプラズマを安定して閉じ込めることが必要です。ところが、これまでのプラズマ実験により、磁場で閉じ込められたプラズマが高温になるにつれてプラズマの中に歪みが生じ、ある時、突然、プラズマの一部が失われる場合があるということが分かっています。プラズマを安定して閉じ込めるためには、この突発現象がどのようにして発生するのか、そのトリガーを明らかにすることは、とても重要な課題です。そこで、LHDで、プラズマの歪みを詳しく観測し、どのような変化が起こって、突発現象が発生しているのかを調べました。
LHDでは、突発現象が起こるかなり前から、プラズマに歪みが生じています。この歪みはドーナツ形状のプラズマ全体に現れるもので、内側に歪む部分と外側に歪む部分があり、それらは時間的に変化しています。また、プラズマ断面の半径は約60センチメートルですが、この歪みの大きさは0.5センチメートル程度です。今回、このプラズマ全体に広がる歪みが一瞬消えた直後に、プラズマの一部が外側に、1~2センチメートル程度、歪むという変化が起こること、そして、その1万分の1秒後に、プラズマの一部が失われるという突発現象が発生しているが分かりました。つまり、プラズマの一部が外側に歪むという変化が、突発現象のトリガーになっていることを明らかにしました。そして、このトリガーを捉えることができれば、プラズマの一部が失われるという突発現象を直前に予知できる可能性があることが分かりました。
この研究成果を3月22日に東京理科大学で開催された日本物理学会の「突発現象の科学」シンポジウムで発表しました。このシンポジウムでは、火山噴火、集中豪雨、太陽フレアー等の様々な突発現象に関する研究が報告され、活発な議論が行われました。プラズマ実験で見られる突発現象は私たちの生活には直接影響を及ぼしませんが、そのトリガーを明らかにした本成果は、自然災害等を事前予知できる可能性を示したことで多くの注目を集めました。今後は、核融合発電の実現を目指すとともに、様々な突発現象の研究にも貢献する知見を得ることを目指して、プラズマの突発現象の理解を更に深化させていきます。

以上

上図は、プラズマ中に生じた歪みを、向きによって赤(外側)と青(内側)で示したもので、色が濃いほど歪みが大きいことを表しています。プラズマ損失という突発現象が起こるかなり前から、ドーナツ形状のプラズマ全体に歪みが生じます(左図)。突発現象の直前に、歪みがプラズマの一部(右端)に集中するという変化が現れます(右図)。この変化が、突発現象のトリガーになります。(図は、パリティVol.33 (2018) No.1 Page 40から引用)

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