かいせんけん:海の豆知識vol.75  県の魚(その6)

ad

2018/04/17 海洋生物環境研究所

 

県の花や県の鳥の様に、全国の都道府県の内、半数以上の県がシンボルとして「県の魚」を制定しています。またシンボルとしての「県の魚」とは別に、それぞれの県の特色ある複数種を選定した「旬の魚・四季の魚」を制定しているところもあります。
ここでは「県の魚」※にまつわるお話しをしましょう。今回は、四国地方です。

※各都道府県の公式ウェブサイトにおいて、県の花や県の鳥と同様に、都道府県のシンボルとして紹介されているものを、「県の魚」としています。

 

福井県「越前がに」
イラスト:メガネをかけた越前がに。背景に恐竜博物館とティラノサウルス。 四国の太平洋側に位置し、室戸岬と足摺岬に囲まれた土佐湾には、四万十川や仁淀川などの清流の水が流れ込む高知県。この県の魚はカツオ(学名:Katsuwonus pelamis)です。
カツオは、全世界の熱帯から温帯海域に生息するスズキ目サバ科の肉食魚です。日本近海では主に太平洋側に多く、黒潮に沿って春から夏にかけて三陸沖まで北上し、秋になり水温が下がり始めると再び南下します。春から夏の北上するカツオは、脂が少なくさっぱりとした味わいの「初鰹」として珍重されます。一方、秋に南下する脂の乗ったカツオは「戻り鰹」として、これまた秋の味覚となっています。古くから日本人の食用とされ、縄文時代には既に食されていたようです。和食には欠かせない鰹節についても飛鳥時代には、原形となる干しカツオが献上品として指定されています。
高知県ホームページによると、カツオは高知県では昔から重要な水産資源で、刺身やタタキとして日常の食卓に上がる馴染み深い魚であること、また漢字で「松魚(しょうぎょ)」とも書き、おめでたい魚の代表格でもあることから、昭和63年6月に県の魚に選ばれました。高知県のカツオ漁は一本釣りがほとんどで、長い竿でカツオを一尾ずつ高々と釣り上げる豪快な漁法は、土佐人(高知県人)の気質そのものです。

▶高知県ホームページ〉…〉高知県のシンボル
 http://www.pref.kochi.lg.jp/info/symbol.html

イラスト:鈴鹿サーキットでF1レースを楽しむ伊勢えび。三重県「伊勢えび」
瀬戸内海に面した四国北東部に位置し、小豆島をはじめとする110余りの島々が存在するとともに、海上交通の守り神として漁師や船員などの海事関係者の崇敬を集める金毘羅宮を有する香川県。この県の魚はハマチです。
ハマチは、北西太平洋に生息するズキ目アジ科に属する回遊性の肉食魚で、標準和名をブリ(学名:Seriola quinqueradiata)と言います。ブリは出世魚と言われ、地域や大きさによって様々な呼び名に変化しますが、その中でも、西日本で体長40~60cm程度の若魚が「ハマチ」(東日本ではワカシやイナダ)と呼ばれます。また流通上では、養殖した中型サイズのブリを、ハマチと呼ぶこともあります。脂の乗ったブリは富山県や石川県を中心とした北陸地方で特に珍重されますが、瀬戸内海沿岸では昔からハマチが珍重されてきたようです。
香川県ホームページによると、昭和初期に日本で初めて香川県で養殖技術が開発され、ハマチ養殖発祥の地であること、モジャコ、ツバス、ハマチ等の名で出世魚と知られ、日々の料理に広く用いられていることから、平成7年11月に県の魚に選ばれました。昭和3年(1928年)に香川県大川郡引田村(現、東かがわ市引田)の野網和三郎氏の手による初の事業化から90年、今では日本各地でハマチ養殖がおこなわれていますが、香川県でも独自のブランドハマチとして、三者三様のこだわりを持った「香川ブランドハマチ三兄弟」が生まれ、その歴史を受け継いでいます。

▶香川県ホームページ〉…〉香川県のシンボル
https://www.pref.kagawa.lg.jp/kocho/shokai/profile/symbol.html

注)県のシンボルが掲載されているウェブページ(URL)は、本紙発行時のもので、予期せず変更されることがあります。

ご迷惑をおかけします(3)-ミドリイガイ-
 不本意ながらご迷惑をおかけしております海生生物、今回はミドリイガイです。
ミドリイガイはイガイ科に属する外来生物で、1967年に兵庫県で初めて報告されて以来、伊勢湾、東京湾など関東以南の太平洋岸沿岸各地に分布を拡大しています。また、沖縄では1980年代より養殖目的の移植試験が行われた経緯があります。名前のとおり、貝の縁辺部がエメラルドのような鮮やかな緑色をしているのが特徴です。
同じイガイ科の外来生物にムラサキイガイがありますが、熱帯原産のミドリイガイは、温度に対する生態特性の違いから、ムラサキイガイとは、本邦における分布域や繁殖盛期(幼生の付着時期)が異なっています(下表参照)。
いずれも足糸で岩や海岸構造物などに付着するため、カキ養殖や定置網などの水産業や発電所冷却水路系などへ影響を与えることが懸念されています。特に発電所冷却水路系においては、3~4cmに成長したイガイ類が、生存に適さない水温条件にさらされることで死亡し、大量剥離による除塵機などの閉塞を引き起こすことがあります。ミドリイガイについては、冬季の10℃程度の低水温が継続することが、大量死亡を引き起こす条件となります。

(実証試験場 渡邉 幸彦))

表 ミドリイガイとムラサキイガイの特徴

 

ad

1400水産一般1404水産水域環境
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました